頼むるに のぶる命は 泣き流す 涙やたまの をとはなるらむ
水茎の あとかき流し けふぞやる あふくま川と いはひそめつつ
寝ず泣けど みもかへらぬは いとどしく 心にくさの まさる君かな
ももはちに かへてもいはむ げにも君 なかひとからの 辛さとならば
あやまたぬ たびさへ妹が 疑へば よしやまことを 知らぬなりけり
難波女が こやならなくに いかにこは ここもかしこも あしあしといふ
頼めぬに 床うちはらふ 折もあれば まして今宵は 思ふばかりぞ
しをれ蘆の 波にしたがふ 程よりも などやしたねの 心つよさは
いはせ川 なかのとだえの まろ橋は みちよりふみも かへすなりけり
たえなむと 思ひたつより なかなかに 憂かりしことも 忘られぞする
苔のむす いはほとなりし 人だにも 言の葉にこそ うちはとけけれ
けふにてぞ あさき心は くまれぬる 今は頼まじ あすかゐの水
待てといひて 年や経ぬらむ 月影を かくやは冴へし 軒のしのぶは
それゆゑと 思はぬ旅の ながめをも いかにやかくは さのみ疑ふ
たつた山 夜半に越えしを 嘆きける 人だに世には ありとこそきけ
はるばると 山また山を おもひやる 心さへこそ 苦しかりけれ
頼めつつ 来ざりし夜半は いかがせし とだにも君が とふこそあらめ
みちのくの 会津の里に 君はありと 思ふばかりぞ 頼みなりける
さざなみや 御津の浜辺に 妹しあれば 春とやはわく 志賀の山越え
夢に逢はば さめしとかねて 思ひしに それもかなはぬ 身をいかにせむ