和歌と俳句

俊惠法師

前のページ<< >>次のページ

もの忌の 程こそあらめ 昨日さへ 見よとや君が かきやたゆべき

ちかごとを つひにはたてむ ものなれど けすらふ程を 待たでうらむる

思へただ 人をうらみぬ 人だにも 月には袖の 濡れぬものかは

見ぬも憂し 見てもわりなし 夢ゆゑに ものを思はぬ あかつきもがな

ききはてむ 袖をはつせと いひつるを ねたくもさもと 思ひけるかな

さしもなぞ 厭ふなるらむ 芹つみし 人だに世には ありとこそきけ

いなしきの 鄙のすまひに たへじとて 我をいとふか うなゐをとめは

なかなかに とらふす野辺と きくならば はやおもひねの 夢にみてまし

妻恋ふる ことはたぐひも なきものを しかな思ひそ 我もさぞなく

くれなゐの 涙の色の こひ衣 けふ墨染めに 思ひかへしつ

頼めおきし その日をのぶる たびごとに いかにつづまる 命なるらむ

さぞかしと おやのいさめを 思へども ことわり無くも 濡るる袖かな

ひととせを こひに暮して つひにけふ しをり果てつる わが袂かな

かへりては 誰がうらむべき ことならむ みとせも待たぬ にひ枕をば

帚木と そのなかかきの 見ゆればや ありながらかく あひ見ざるらむ

おろしおく 妹があさての おもかげの またをぐるまに のりにけるかな

ひくによる ものなりながら あづさゆみ など思はずに ふさぬ心は

冬来なば また春ともや いひやらむ さてもや命 なほ生けるべき

もの忌と 常はいへども こまごまと 人のいふをば などや咎めぬ

わきもこが うらにかけりし あしてをば 難波のひとが ひきかすめけむ