よみ人しらず
あだなりと名にこそたてれ 桜花 年にまれなる人もまちけり
業平朝臣
けふこずはあすは雪とぞふりなまし 消えずは有りとも花と見ましや
よみ人しらず
ちりぬれば恋ふれどしるしなきものを けふこそ桜折らば折りてめ
よみ人しらず
折りとらば惜しげにもあるか 桜花 いざやど借りてちるまでは見ん
きのありとも
さくら色に衣はくかくそめてきん 花のちりなん後のかたみに
みつね
我がやどの花みがてらにくる人は ちりなむ後ぞこひしかるべき
よみ人しらず
春霞たなびく山のさくら花 うつろはむとや 色かはり行く
よみ人しらず
待てといふにちらでしとまるものならば なにを桜に思ひまさまし
よみ人しらず
残りなくちるぞめでたき 桜花 有りて世の中はての憂ければ
よみ人しらず
この里にたびねしぬべし 桜花ちりのまがひに家路わすれて
よみ人しらず
うつせみの世にも似たるか 花桜 さくと見しまにかつちりにけり
これたかのみこ
桜花ちらばちらなむ ちらずとてふるさと人のきても見なくに
そうくほうし
さくらちる花の所は 春ながら 雪ぞふりつつ消えがてにする
素性法師
花ちらす風のやどりはたれか知る 我に教へよ 行きてうらみむ
そうくほうし
いざ桜 我もちりなむ ひとさかり有りなば人にうきめ見えなん
つらゆき
一目見し君もくるやと 桜花 けふは待ちみて ちらばちらなん
つらゆき
春霞なにかくすらん さくら花ちるまをだにも見るべきものを
藤原よるかの朝臣
たれこめて春のゆくへも知らぬまに 待ちし桜もうつろひにけり