よみ人しらず
今もかも咲きにほふらむ たち花のこじまのさきの山吹の花
よみ人しらず
春雨ににほへる色もあかなくに 香さへなつかし 山吹の花
よみ人しらず
山吹は あやなな咲きそ 花見んとうゑけん君が こよひこなくに
よみ人しらず
かはづ鳴くゐでの山吹ちりにけり 花のさかりにあはましものを
素性法師
おもふどち春の山辺にうちむれて そこともいはぬ旅寝してしが
躬恒
梓弓春たちしより 年月の いるがごとくにおもほゆるかな
貫之
なきとむる花しなければ 鶯もはてはものうくなりぬべらなり
深養父
花ちれる水のまにまにとめくれば 山には春もなくなりにけり
元方
惜しめどもとどまらなくに 春霞帰る道にしたちぬとおもへば
興風
こゑたえず鳴けや鶯 一年にふたたびとだに来べき春かは
躬恒
とどむべきものとはなしに はかなくも ちる花ごとにたぐふ心か
業平朝臣
ぬれつつぞしひて折りつる 年のうちに春はいくかもあらじと思へば
躬恒
けふのみと春をおもはぬ時だにも 立つことやすき花のかげかは