2000年5月27日第一回植田実さんと建築あそび記録 HOME 

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岡田哲史さんの設計・・まんぼう1997 静岡県熱海市
 
早稲田を卒業した、岡田さんという建築家でね。一寸向こうでしばらく勉強したりしたんで、ピラネージがすごい好きな人ですね。これは熱海の山の中。別荘地帯なんだけど。一寸お茶の水博士の実験室と言うか(笑い)そういう雰囲気なんです。これも映像プロダクションのご主人とその家族の住宅です。

先ほどのガラスの家に家族が入ったらどうするかと、あくまで彼に完全に従うか、彼の趣味に合うか、それとも全く違う住宅を部屋を増築しないと成り立たないわけですね。つまりあそこでは、まず個室があるわけです。

 これはどうなっているかと言うと、コチラに四角い棟が別にありまして、でコチラにこういった丸い棟が、コチラが個室棟でコチラが共有棟なわけです。これが三つ繋がるとこの家(千万家と同じになるわけです。(笑い)ブリツジでつないでいるわけですね。
 

 よく見るとね、今のまん丸と言ってもフットボールみたいな形じゃなくて、こういうお饅頭型なんですよね。ぺちゃんこになっている。こっちから見るとまん丸に見えるんだけど、実際はこういう縦長の建物です。

だからこれで見ると、平面的にはね、個室棟と共有棟がほぼ同じぐらいのボリュームに見えるんだけど、コチラはたったの一層ですね。コチラは三層になっているわけで、遙かにコチラの方が実はボリュームが大きい。そういう作り方をしてる。

ここで面白いのは個室は逆にもう普通で良いと。むしろ日常的なモノはここで行う。ただコチラは全体を真っ白に塗り上げて、いわば一種の非日常的な空間を作りたいと。

だから今までの住宅の居間だとか食堂で、なんて言うのかな、ほっとするとかそういう、あれがありますよね。 そこで家族の現実を…そういったモノを味わうというようなスペースじゃなくてむしろ、ここに来ると家族が吹っ飛んじゃう様な (笑い)、そういうスペースに作っているわけです。

これは下のフローリングも白く塗り込んでいる。ここは展望が開けてますから、意味がちゃんと付いてるわけですね。これはいわば展望室ということで、逆に言うと、ある意味非日常かもしれないけれども、言って見れば、かなり恵まれた立地条件にある住宅だったら決して珍しくは無いかもしれません。

 まあ今日佐藤さんに見せて頂いた住宅(BOX11 )というのは、どちらかと いうとこういうもので。 これはかなり観光的な熱海の海が見えるんだけど、田圃がズーと見えた。 ああいう家と言うのは、逆にもっと非日常的かもしれません

 ただピクチャーウィンドーを通して「向こうが綺麗に見える」と言うのは決してね、最近の傾向じゃなくて、古代からズーッとあった住宅の一側面であります。

これねS建築という雑誌でご覧になっていると思いますが、これも相当メリハリが判りますよね。

何処に階段があって何処に手摺りがあって、みんな白く塗ってるんですけどね。真っ白の中に空が、外の景色が見えてるなーと判るかもしれない。

S建築のプロの写真家が撮った写真がS建築には出てるんだけれど、それはもっとメリハリを付けてるわけ、ピシッと判るようにね。

ここに床があって白く塗られているんだけど、照明やなんかをとっても巧く使ってピシッと普通に見せてるんだけど。全然つまんないの、(笑う)その写真が−。

ここで見えるのはメリハリの付いた空間じゃ無くてね、これ信じられないかもしれないけど、ほとんどね白い闇みたいなね。一種の目くら状態になっちゃうんですね。光がハレーションを起こすから。これレンズ・フィルムを通すとこういう風にちゃんと見えるんですけど。実際にはずーと錯覚するような空間になっています。

しかも出来たてで汚れてないということもありますね。段々とうっすらと、埃が付いてくるなり手垢が付けば陰影が付いて普通の住宅に近づいてくるかもしれませんけれど。、ああいう風に何もかも白く塗るって言うのは、ほんとに異常な空間になるんだなぁーと、僕始めて経験したんですよね。

元々こういう風に色や形でもって、建築は非常に経験的なもん 体験的なモノであるということを日本の建築において始めてそれを実現して、「あっ」と言わせたのは、磯崎新という建築家の大分県立図書館です。

 あれは模型が発表された当時は誰も問題にしてなかったんですね。出来てから始めてあれが一挙に建築界では重要な、あのー建築としてみんな驚いてしまう。評価してしまうわけだけど……。

磯崎さんが最初に建築が色と形と、それからあくまで体験というモノを、核にした建築空間の構成を、非常に巧くやったとして、ほんとビックリするような体験、シークエンスを作っていくわけです。

そういう例が60年代にあったんですけども、それ以来 いろんな形でビックリするような色を使ったり、なんか長がーい廊下つかったり、鏡を巧く使ったりする人はいろんな時に出てくるわけです。 だだその中でも、僕はこれはビックリしたんですよねぇー。 

これが突然 靴脱ぎ場なんですね。ここで靴ぬいで上がるんだけど、ここの外側が球形、球面の内側なんです。そうすると全部真っ白に塗ってるとね、ここからの距離が全くわかんない 。ぱっと落ちたら十年滝の中みたいな。(笑う)まるで見えない。 どう目を凝らしても。せいぜい1メーターか2メーターぐらいの所なんですけどね。飛ぶと斜めのところに着地するわけで怖い感じなんでけど。つまりそういう錯覚を使ってる住宅です。
 
 これは大げさだと言うかもしれないけどほんとに白い闇の中を、こうー見て行くとね突然台所のステンレスのカウンターがばーんと出てくるわけ、真っ白い何も無いところから。そうすると「アッ、ここが台所 なんだ」ということは空間はつまり「住宅の中なんだ」みたいな、(うふふ)ほんーとーにそんな気持ちになっちゃったんですよ今時。

人気が無いと言うこともあったんですけども、なんか2001年宇宙の旅の宇宙士が最後にたどり着く、日常、非日常とは言っておれないような、あれになっちゃった。で、それは家族がこういうところに集まって団欒をしてというような発想からは、とうていこういう住宅は絶対出来ない

なんていうか非常に、ここに住んでる人たちは個人的な人たち。つまりどういう住み方、多分この建物が出来てから、それぞれの生活が始まるんじゃないかなーと思っています。そういう傾向が顕著に感じられた。

大体 岡田さんというのはピラネージが好きだって判るように。ピラネージていう方は実際の建築を作らなかった人だけど、こういうふうに階段が上に上に交錯していく、交錯して上がっていくスペースを始めて絵にして見せた人ですね。

で、それを意識させた人ですね。それを実際に建築空間としてこういう不思議な空間があるんだよということ。空間の持ってる内容の前に、空間そのものが持っている 構成が持っている ある力みたいなモノを、ピラネージは絵だけで示した人なんだけど、それに心酔して、狙っていると言うかな、どこかで考えているんじゃないかと思います。この人は大体そういう傾向があるんと思うんですね。


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