和歌と俳句

伊勢物語

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 むかし おとこ有けり  ならの京は離れ この京は人の家まださだまらざりける時に  西の京に女ありけり その女 世人にはまされりけり  その人 かたちよりは心なんまさりたりける  ひとりのみもあらざりけらし  それをかのまめ男 うち物語らひて 帰り来て いかゞ思ひけん  時は三月のついたち 雨そをふるに遣りける 

  起きもせず寝もせで夜をあかしては春の物とてながめ暮らしつ

 むかし おとこありけり  懸想じける女のもとに ひじきもといふ物をやるとて 

  思ひあらば葎の宿に寝もしなんひじきものには袖をしつゝも

 二条の后のまだ帝にも仕うまつりたまはで  たゞ人にておはしましける時のこと也