和歌と俳句

伊勢物語

<< 戻る | 次へ >>

 むかし おとこ有けり  東の五条わたりにいと忍びていきけり  みそかなる所なれば 門よりもえ入らで  童べの踏みあけたる築地のくづれより通ひけり  人しげくもあらねど たびかさなりければ あるじ聞きつけて  その通ひ路に 夜ごとに人をすへてまもらせければ  いけどもえ逢はで帰りけり さてよめる 

  人知れぬわが通ひ路の関守はよひよひごとにうちも寝ななん 

とよめりければ いといたう心やみけり あるじゆるしてけり 
 二條の后に忍びてまゐりけるを 世の聞えありければ  兄人たちのまもらせ給ひけるとぞ