むかし はかなくて絶えにけるなか なほや忘れざりけむ 女のもとより
憂きながら人をばえしも忘れねばかつ恨みつゝ猶ぞ恋しき
といへりければ さればよ といひて おとこ
あひ見ては心ひとつをかは島の水の流れて絶えじとぞ思ふ
とはいひけれど その夜いにけり いにしへゆくさきのことどもなどいひて
秋の夜の千夜を一夜になずらへて八千夜し寝ばやあく時のあらむ
返し
秋の夜の千夜を一夜になせりともことば残りてとりや鳴きなむ
いにしへよりもあはれにてなむ通ひける