業務日誌(2002年12月その1)

 12月2日 12月3日 12月6日 12月9日
 12月10日
 一つ前へ 一つ後へ  日付順目次へ 分野別目次へ トップページへ


12月10日 (プチ日誌)

 新潟の監禁事件の控訴審判決で、懲役14年という1審判決が破棄されました

 結果的には私の指摘していたとおりの結論になりました。

 司法が世論を気にするあまり、罪刑法定主義という民主主義の根幹をなす原則まで曲げることがなかったことは正しいと思います。被害者の方は納得いかないでしょうが(私だって絶対的には軽すぎると思います)、結局は法改正によるしかない、それが我が国のルールです。




12月9日 裁判の遅延は誰のせいか

 日曜日の日経で、司法迅速化法案にからんで、法曹3者が裁判の遅延の責任を互いになすりつけあっているとの記事がありました。

 記憶で書いてますので、不正確な点があったらご容赦。曰く、裁判所や検察庁は、弁護士の大規模事務所化等の体制の整備の遅れが原因と主張、一方で日弁連は裁判官や検察官の増員が不可欠と主張、とか。

 実は、いずれも30年も前からお互いに主張しあっている内容です。まだやっているのかね、と言う感じ。

 あえて言えば、どれも正しい指摘です。どうして法曹三者は自らにも原因の一端があることは決して認めずに、他者だけを攻撃するのでしょうかね。

 結局、ケースバイケースで、誰に原因があるか、いずれの場合もあるかと思います。実際のところ、弁護士の準備不足が原因で(特に民事)裁判が遅れることはままあります。でも、それは弁護士自身の体制もありますが、依頼者とのコミュニケーションには一定の時間がかかるという場合もあります(こちらを参照)。「依頼者」の存在しない裁判所や検察庁には理解できないのかも知れませんが(だからこそ、法曹一元が必要だ!)。

 一方で、検察官や裁判官に原因がある場合も確かにあるのですよ。例えば、この事件。この刑事事件は、本来、昨年春で証拠調べが終了して、昨年秋には結審できるはずの事件でした。ところが、昨年春に検察官が人事異動で交代したばかりに、新たな検察官が、突然もう終了したはずの証人尋問を再度いくつも求めて、それにつきあっていたばかりに一年近く結審がのびてしまったのです。さらに言えば、この事件では、8月30日に判決が出た後、本日現在、まだ判決書ができていません!!!ですから、控訴審がいつまで経っても始まらない状態です。これは明らかに裁判所の怠慢による訴訟遅延と言わざるを得ません。




12月6日 法律相談雑感

 このHPも見ていただける方が徐々に増えたお陰か、最近はコンスタントに「HPを見て………」という形での法律相談のお問い合わせが来るようになってきています。感謝、感謝。

 そういった形でいただくお問い合わせですが、一方で困るのが、やはりというか、注意書きを全く読まずに、あるいは無視してお問い合わせ下さる方です。

 具体的に言うと、身元も明かさずに、質問内容だけ書いてくる方が結構多いんですよねー。これは困ります。

 そのような方には、とりあえず、「住所とお電話番号、お名前をお知らせ下さい」と返信するのですが、ほぼ100%の確率で二度と返信が来ません………

 まあ、匿名で相談したい気持ちを持つ方がいらっしゃることは否定しませんが、弁護士の仕事はその方との信頼関係が基盤になりますので、相談者の顔も見えない状態でのアドバイスはやはり責任が持てません。

 一方で、きちんと注意書きを読んだ上で、ルールに従った形で相談の申込をして下さる方も相当数いらっしゃいます。実を言うと、HPを始めた当初、ここまで多数の方がHP経由で相談の申込をされるようになるとは予想しませんでした。




12月3日 ロースクール私見(4)

 民主党の鳩山代表、結局辞任ですか。ご愁傷様というかなんというか、ですね。

 それはそうと、本日の日経の1面下のコラムで、鳩山由起夫という秀才の限界、みたいな論じかたをしておりまして、そこから「旧来の秀才の限界」という一般化→「旧来の司法試験で合格した旧来型の秀才型法律家の限界」→「ロースクール導入による新型?秀才への期待」みたいな論法がされていました。

 まあ、相当強引な思いつきコラムとは思えますが、それにしても私が旧来の「秀才」なのかは措くとして、何とも楽観的な見通しだなあと思わざるを得ません。

 そもそも今議論されているロースクール、というのは、一種の大学院に過ぎません。司法試験合格者を大量に増加させる以上、旧来の法曹養成方法では全く不可能になるためにアメリカの制度を参考にして発案されているだけです。

 しかしながら、単に文部省と大学が示し合わせて「ロースクール」なる名前の大学院を作ったところで、従来の大学教授がそのままロースクールに配置換えになって教えているようでは、まあほとんど意味はない。というか、結局司法試験に合格することは不可能で、学生はまたも予備校通いになるでしょう。

 なぜ、現在の法学部の学生は、一般に大学の授業に見向きもせずに司法試験予備校に通ってしまうのか?授業が役に立たないからです。

 もっと根本的な問題として、日本の法学者たちの議論は、ほとんどが外国の議論の輸入に終始していて、肝心な日本国内の法律実務についての研究は二の次であることが挙げられます。

 このままでは、なんの役にも立たない大学院が増えるだけでしょうね。というわけで、さすがに大学も、このままではまずいと、実務法律家を講師に招聘することに躍起なようです。

 しかししかし、ですね、実務法律家でも、教育能力があるのはほんの一握りです。アメリカの一流ロースクールがすごいのは、ソクラテスメソッド(教授と学生のシナリオのない対話による双方向授業とでもいいましょうか)による緊張感あふれる授業により、学生が鍛えられるからです。

 実務家を持ってきても、このノウハウがなければ授業は成り立ちません。しかし、こうしたノウハウを誰がどうやって持ち込むのか、全く見えてきません。

 要は、ハコだけ作れば新たな秀才が生まれるかは??ですよ、と言うことです。




12月2日 (プチ日誌)

 民主党の混迷、見てられないですねぇ。どうして人は末期症状になると、することなすこと見当はずれなんだろう。

 と言っても、政争があって話題にされるだけましかも。