古事記のものがたり 第十話 天の岩戸開き |
ふることに伝う。 高天原にある天の岩戸に天照大御神がお隠れになってしまわれ たために、高天原と中つ国から太陽の輝きが消え失せ、すっかり暗闇に覆われてしまいました。そのために神々の不満や怨差の声が聞こえ初め、たくさんのわざわいが起り出しました。 「どうすれば天照大御神を岩戸からつれ出すことができるだろうか」 非常召集令によって天の安の河原に八百万の神々があつまり、 解決策をねるために、高天原会議を開くことになったのでございます。 その席で『造化三神』の一人『たかみむすひ』の神の子で、高天原一の知恵者、思金(おもひかね)の神が名案を出しました。八百万の神々も満場一致でその意見に賛成し、さっそく準備が始ま りました。 まず、太陽の使いの長鳴鳥を集めて、いっせいに「アサー」と鳴かし、 また、高天原の堅い石を取り、くろがねを造り、ひとつ目の鍛治職人あまつまら(天津麻羅)に鉄を打たせ、 また、鏡造り職人いしこりどめ(伊斯許理度売)に命じて大きな『八尺鏡』を作らせ、 また、玉造職人たまおや(玉祖)に命じて『八尺の勾玉のみす まるの珠飾り』を作り、 また、あめのこやね(天児屋)、ふとだま(布刀玉)に命じて天の香久山のははかの木(朱桜の木)を燃やして鹿の肩骨を焼いて占いをし、 また、天の香久山のさか木を根こそぎ掘り取って、その上の枝に『勾玉のみすまるの珠飾り』を取りつけ、中ほどに『八尺鏡』をかけ、下の枝に『白と青の幣』を垂らして、ふとだまが持ち、 また、あめのこやねが天照大御神出現祈願の祝詞を唱え、 また、あめの手力男が岩戸のわきに隠れ、 天照大御神を誘い出す大宴会の準備は大わらわです。こうして、岩戸の前には八百万の神々が、わいわいがやがやと勢ぞろい されました。 そこへ登場してきたのが神々の人気者、あめのうずめ(天宇受 売)でございました。天の香久山のひかげのかづらをたすきにか け、まさきのかづらを髪飾りにし、魔よけの笹の葉を手に持っています。 そして、ステージがわりの大きなおけを伏せてその上に乗り、とんとんリズムをとりながら面白おかしく踊り始めました。 おけは打楽器のように大きな音を鳴り響かせています。調子に乗ったあめのうずめは、しだいしだいに神がかり状態になり、踊り狂い出したのでございます。 乳は左へ右へ、上へ下へと揺れ動き、裾はめくれて女陰はあらわに見え隠れしました。 日本初のストリップでございます。 そのようすがとてもおかし く、神々はお腹をかかえてどっと笑ったのです。『咲ひ』と踊りは、邪気を払う呪術のひとつでもあるのです。そのどよめきは大音響となり高天原中に響きわたりました。 そればかりか、あめのうずめにつられて八百万の神々も立ち上 がり、思い思い体をゆすって踊り出し、岩戸の前のにぎやかさは今やたけなわです。 「世の中は暗く嘆いているはずなのに、どうして外はにぎやかに笑い踊っているのだろうか?」 岩戸の中の天照大御神は不思議に思い、そっと戸を細めに開けました。 それを見たあめのうずめは、すかさず、 「あなたさまよりも尊い神がおられるので、うれしくなって皆で遊んでいるのですよ」 とくるくる舞い踊りながら答えました。 そこへさっと、ふとだまとあめのこやねの二人が、いしこりどめの作った大きな鏡を差し出し、天照大御神の姿を映しました。 天照大御神は、鏡に映ったのが自分だとは知らずに、もっとよく見ようと少しずつ岩戸から体をのり出されたのです。 さてどうなるのでしょうか。このお話はまたこの次に。 |
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