よみ人しらず
今ぞしるあかぬ別れの暁は君をこひぢに濡るるものとは
返し よみ人しらず
よそにふる雨とこそきけおぼつかな何をか人のこひぢといふらむ
よみ人しらず
たえはつる物とは見つつささがにの糸を頼める心ぼそさよ
返し よみ人しらず
うちわたし長き心は八橋のくもてに思ふ事はたえせじ
よみ人しらず
思ふ人おもはぬ人の思ふ人おもはざらなん思ひしるべく
返し よみ人しらず
こがらしの森のした草風はやみ人のなげきはおひそひにけり
よみ人しらず
別をば悲しき物と聞きしかどうしろやすくもおもほゆるかな
よみ人しらず
泣きたむる袂こほれる今朝みれば心とけても君をおもはず
よみ人しらず
身をわけてあらまほしくぞ思ほゆる人は苦しといひけるものを
よみ人しらず
雲井にて人を恋ひしと思ふかな我は葦邊の鶴ならなくに
源等朝臣
浅茅生の小野のしの原しのぶれどあまりてなどか人の恋ひしき
兼盛
雨やまぬ軒の玉水かずしらず恋しき事のまさるころかな
よみ人しらず
伊勢の海にはへてもあまるたく縄の長き心は我ぞまされる
よみ人しらず
色にいでて恋すてふ名ぞたちぬべき涙にそむる袖のこければ
よみ人しらず
かくこふる物と知りせば夜はおきて明くれば消ゆる露ならましを
よみ人しらず
逢ひも見ず歎きもそめず有りし時思ふ事こそ身になかりしか
よみ人しらず
恋のごとわりなき物はなかりけりかつむつれつつかつぞ恋しき
よみ人しらず
わたつ海に深き心のなかりせば何かは君を怨みしもせん
よみ人しらず
みな神にいのるかひなく涙河うきても人をよそに見るかな
返し よみ人しらず
いのりけるみな神さへぞうらめしきけふより外に影の見えねば