和歌と俳句

伊勢物語

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十二段

 むかし おとこ有けり 人のむすめをぬすみて 武蔵野へ率て行くほどに  ぬす人なりければ 人の守にからめられにけり  女をば草むらのなかにをきて 逃げにけり 道来る人 
  この野はぬす人あなり 
とて 火つけむとす 女 わびて 

  武蔵野は今日はな焼きそ若草のつまもこもれり我もこもれり 

とよみけるを聞きて 女をばとりて ともに率ていにけり

十三段

 昔 武蔵なるおとこ 京なる女のもとに  聞ゆれば恥づかし 聞えねば苦し  と書きて 上書に むさしあぶみ と書きてをこせてのち  をともせずなりにければ 京より女 

  武蔵鐙さすがにかけて頼むには問はぬもつらし問ふもうるさし 

とあるを見てなむ 堪へがたき心地しける 

  問へばいふ問はねば恨む武蔵鐙かゝるおりにや人は死ぬらん