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4月11日 権力・権威・論理 民主主義社会は、単に裸の「権力」があると言うだけでは人を従わせることはできないはずです。 実際には裸の「権力」=強制力が行使されずとも、その権力をバックにした「権威」が人を従えていると言えます。しかし、「権威」も、「権力」によってのみ与えられるのでは、最終的な正当性は認められないでしょう。 結局は言論による「論理」に基づく説得力が背後にあってこそ、人を従わせることができるのではないでしょうか。 例えば、司法改革で導入が決められている「裁判員」制度は、司法権の行使のバックボーンを、職業裁判官による「権威」による説得から、一般市民に通じる「論理」に変えていこうという動機からも高く評価することができます。 これに対し、国際社会は長らく「バランス・オブ・パワー」=「権力」による説得が主流でした。これに対し、覚束ないながらも国際機関という「権威」による説得を目指したという点で、国連の発足は画期的だったのではないかと思われます。 しかしながら、今回のアメリカによるイラク攻撃では、全く昔の「権力」による説得という手法の時代に逆行してしまったようです。 アメリカの目論見どおりに戦争は終結しつつあるのかも知れませんが、私には、いかなる結果であれ、「権力」はあっても「権威」は失われた社会が残るだけのような危機感があります。 4月8日 被疑者法律扶助 扶助協会の財政難(昨年10月28日の日誌など)が、ついに刑事弁護の分野にも及んできたようで。今後は無資力かどうかの審査を厳しくし、援助した費用は原則償還を求めていくそうです。 刑事事件の被告人(起訴された人)については、憲法で保障された国選弁護の制度がありますが、起訴される前の被疑者(特に逮捕・勾留されている人)には国費で弁護人をつける制度がありません(現在の司法改革の中で公選弁護制度が議論はされていますが)。そこで、資力のない被疑者に対する刑事弁護については、法律扶助協会がいままで扶助をしてきました。 しかし、この被疑者援助の制度、はっきり言っていままではザル法のような運用でした。まず、援助の条件である「無資力」については、援助を申請した弁護士(弁護人になろうとする弁護士)が「援助の必要あり」と申告すれば、フリーパスで通っていました。おまけに扶助協会が援助した弁護士費用について、被疑者に後で返還を求めることもしていませんでした。 かわいそうな刑事被疑者に対し、できるだけ起訴前弁護を充実させるべきと言う配慮があったものだと思われます。 このため、被疑者やその身内に弁護士費用を支払ってもらおうとせずに、ほぼ原則扶助申請をして弁護人になる、という方針の弁護士も相当いたようです。 しかし、私はずっと以前に1件扶助事件による刑事弁護をして以来、当番弁護で出動して、結果として扶助制度を利用して弁護人になったことはありませんでした。まあ、偶然そのような案件に遭遇しなかったといえばそれまでですが、原則として、被疑者あるいは被疑者の身内の方に費用を出してもらって弁護人になってきました。 そのように、私が被疑者あるいは身内の方に費用を出してもらうという方針をとってきたのは、理由がないわけではありません。扶助協会を利用すると、被疑者にとっては、いわばタダで弁護士が付くことになります。タダでついた弁護士に対して、真摯に協力しない、わがままばかりを言う被疑者の割合が結構多いのです。自分の懐が痛んでないので、かえって無責任になるのでしょうか。 もちろん、すべての被疑者がそうだというわけではありませんし、身寄りのない外国人等、扶助制度を使う以外に弁護士の頼みようがない方もいるでしょう。そうした場合に扶助制度を使うのに躊躇するわけではありません。しかし、自腹で費用を出せる人には出してもらう、それが健全な司法の成長につながるのではないかと思います。 とはいえ、今回の扶助協会の方針、いままでポリシーで刑事弁護の基準を緩くしていたのを、財政難だということで、あっという間に方針変更してしまうのと言うのは何なんでしょうねえ。結果として運用が私の感覚に近づいたとはいえ、複雑な気分です。 4月4日 修習終了式 昨日は、夕方から56期修習生のEF班弁護修習終了式でした。 私も東弁の修習委員会を4年務めたため、今回の修習生で4期目の担当修習生を送り出したことになります(昨年は担当班の班長をやらされました。そのときの開始式の日誌がこれです)。 今年はヒラ幹事ということもあり、懇親会を仕切る必要もなく、飲んで他人のスピーチを聴いて笑っていればいいので気楽でしたが。 弁護修習というのは、指導担当弁護士一人に司法修習生一人をあてがい、配属された修習生は3ヶ月間指導担当弁護士の事務所に勤務し、指導担当弁護士の仕事にいつも同行して見習いを行うというもので、いわば現代に残る徒弟制度です。 弁護修習開始式の際にも、指導担当弁護士と修習生にひとりずつ挨拶をしてもらいますが、その際にはお互い何となく他人行儀で当たり障りのないお世辞を言っていることが多いようです。しかし、3ヶ月仕事をともにした後にそれぞれスピーチをしてもらうと、お互いがやはり目に見えない連帯感を持っているようで、修習生が指導担当弁護士に薫陶を受けたのだなあ、ということがはっきりわかることが多々あります(もちろん、これはカップリングがうまく行った場合で、全部が全部そういかないところがつらいところですが)。 このように、指導担当から全人格的な影響を受けるということが、司法修習の肝といっても差し支えないかも知れません。それだけに、法曹養成人口の拡大とともに、手作りのマンツーマン教育からロースクールを軸としたシステマチックな教育に転換された場合、我々とは質的に異なった法曹が生まれてくるのではないかという密かな危惧があります。 そうそう、とある修習生から、私が(証人役となって)指導した模擬裁判について、私から「『社会人として、証人に敬意を持って尋問しなさい。あなたの尋問からは証人に対する思いやりを感じない』と指導されたことが最も印象深い。感銘を受けた」旨の感謝の言葉をいただきました。しかしながら、私はこんなことをいった覚えがない(^^;たぶん、証人テストを受けながら「依頼者の会社の証人なんだから、もう少しやさしく聞いてくれえ〜」とでも言ったのではないかと思います。美談はこうしてねつ造されていく(笑)。 4月2日 ヤミ金にご注意(4) 注 (1)は 2001年9月19日 (2)は 2002年4月11日 (3)は 2003年1月27日 もはや連載?? 昨日の神田のクレサラ法律相談で、ヤミ金がらみを3件も受けてしまい、またまた気が重い状態です。 弁護士の中にはヤミ金撲滅に異常に執念を燃やす方もいますが、私はそこまで執念深くはなれません(^^; 最近はヤミ金の世界も手が込んできて、いろんな新手の商法が出ています。例えば、 ○押し貸し ヤミ金に手を出した方などに、勝手にお金を送金しておいて(裏の世界では口座番号が出回るらしい)、「利息を付けて返せ!」と法外な金利を要求するタイプ ←「借りた」訳ではないので、利息など支払う必要は当然ありません。そもそも違法な高金利ですから、借りたとしても支払う必要はありません。元金も、「利息を脅し取るために勝手に送金したもの」ですから、民法の不法原因給付にあたり、返還の必要性がないということさえ考えられます。 ○債権譲り受けの騙り ヤミ金に手を出した方に、知らない業者から電話がかかってきて「おまえの債権はうちが譲り受けた」といって支払いを迫るタイプ。 ←債権譲渡通知は、譲受人が勝手に「譲り受けた」と主張しても取り立てはできず(対抗できない)、譲渡人からの内容証明郵便等による通知が必要です。この通知のない場合は支払う必要は全くありませんし、そもそも元の債権がヤミ金のものの場合は公序良俗に反するものとして返済義務が否定される可能性すらありますので、譲受人にも支払う必要はないはずです。そもそも本当に債権譲渡がされている場合はまれだと思われます(ブラックリストを手に入れて当てずっぽうに連絡している可能性が大きい)。 ○電報作戦 債権譲り受けタイプと併用されたりしますが、電報で脅迫してくるタイプ。お悔やみ電報で「死んでください」等脅迫するタイプや、もっとお茶目に「ドラえもん」電報を送りつけて気味悪がらせる(私の相談者にこれを10個も送付された方がいました)タイプがある。 ←いずれも前述のとおり、入手した個人情報を元に多数の債務者に同一文面を発送している場合がほとんどですので、相手にする必要はありません。さらに脅迫された場合は警察沙汰にすることです。 |