よみ人しらず
まこもかるほり江にうきてぬる鴨のこよひの霜にいかにわぶらん
白雲のおりゐる山とみえつるはふりつる雪のきえぬなりけり
ふるさとの雪は花とぞふりつもるながむる我も思ひきえつつ
流れゆく水こほりぬる冬さへや猶うき草のあとはとどめぬ
心あてに見はこそわかめ白雪のいづれか花のちるにたがへる
天の河冬は氷にとぢたれやいしまにたぎつ音だにもせぬ
おしなべて雪のふれればわがやどの杉を尋ねてとふ人もなし
冬の池の水に流るるあし鴨のうきねながらにいくよへぬらん
山ちかみめづらしげなくふる雪のしろくやならん年つもりなば
松の葉にかかれる雪のそれをこそ冬の花とはいふべかりけれ
ふる雪はきえてもしばしとまらなん花ももみぢも枝になきころ
涙河身なくばかりの淵はあれど氷とけねばゆく方もなし
ふる雪に物思ふわが身おとらめやつもりつもりてきえぬばかりぞ
よるならば月とぞみましわがやどの庭白妙にふりつもる雪
梅が枝にふりおける雪を春ちかみめのうちつけに花かとぞ見る
いつしかと山の桜もわがごとく年のこなたに春を待つらむ
年深くふりつむ雪を見るときぞ越のしらねにすむここちする
としくれて春あけがたになりぬれば花のためしにまがふ白雪
春ちかくふる白雪は小倉山峰にぞ花のさかりなりける
冬の池にすむにほ鳥のつれもなくしたにかよはん人にしらすな
うばたまのよるのみふれる白雪は照る月影のつもるなりけり
この月の年のあまりにたらざらば鶯ははやなきぞしなまし
関こゆる道とはなしにちかなから年にさはりて春をまつかな
藤原敦忠朝臣
物思ふとすくる月日も知らぬ間に今年はけふにはてぬとかきく