源宗于朝臣
つれもなくなりゆく人の言の葉ぞ 秋よりさきのもみぢなりける
兵衛
死出の山ふもとを見てぞかへりにし つらき人よりまづこえじとて
小町があね
時すぎてかれゆく小野の浅茅には 今は思ひぞたえずもえける
伊勢
冬かれの野辺とわが身を思ひせば もえても春を待たましものを
友則
水のあわの消えでうき身といひながら 流れてなほもたのまるるかな
よみ人しらず
みなせ川ありてゆく水なくはこそ つひにわが身をたえぬと思はめ
躬恒
吉野川 よしや人こそつらからめ はやくいひてしことは忘れじ
よみ人しらず
世の中の人の心は 花ぞめの うつろひやすき色にぞありける
よみ人しらず
心こそうたてにくけれ そめざらば うつろふ事も惜しからましや
小野小町
色見えでうつろふものは 世の中の人の心の花にぞありける
よみ人しらず
我のみや世をうぐひすとなきわびむ 人の心の花とちりなば
素性法師
思ふともかれなむ人をいかがせむ あかずちりぬる花とこそ見め
よみ人しらず
今はとて君がかれなば わがやどの花をはひとり見てやしのばむ
宗于朝臣
忘れ草かれもやすると つれもなき人の心に霜はおかなむ
素性法師
忘れ草なにをかたねと思ひしは つれなき人の心なりけり
素性法師
秋の田のいねてふこともかけなくに 何をうしとか人のかるらむ
紀貫之
はつかりのなきこそわたれ 世の中の人の心の秋しうけれは
よみ人しらず
あはれともうしとも物を思ふとき などか涙のいとなかるらむ
よみ人しらず
身をうしと思ふにきえぬ物なれば かくても経ぬる世にこそありけれ
典侍藤原直子朝臣
あまの刈る藻にすむ虫の 我からとねをこそなかめ 世をばうらみし