和歌と俳句

藤原定家

院五十首

知られじなちしほの木の葉こがるともしぐるる雲の色し見えねば

いかにせむ人もたのめぬ呉竹の末葉吹きこすあきかぜのこゑ

あまそそぎほどふる簷の板廂ひさしやひとめもるとせしまに

いまはとて忘るるたねやしげりにしわがすむ里は軒の下草

せく袖よ瀬々の埋もれ木あらはれてまた越す浪に朽ちや果てなむ

かりにだにとはれぬ里の秋風に我が身うづらの床はあれにき

わびはつるわがおもひねの夢路さへ契りしられて吹くあらしかな

来ぬ人をつきせぬ浪にまつら船よるとは月のかげをのみみて

形見ぞと頼みしことのかひもなきうき中のをの絶えやはてなむ

みしかげよさてやまあゐの摺り衣みそぎかひなきみたらしの浪