知られじなちしほの木の葉こがるともしぐるる雲の色し見えねば
いかにせむ人もたのめぬ呉竹の末葉吹きこすあきかぜのこゑ
あまそそぎほどふる簷の板廂ひさしやひとめもるとせしまに
いまはとて忘るるたねやしげりにしわがすむ里は軒の下草
せく袖よ瀬々の埋もれ木あらはれてまた越す浪に朽ちや果てなむ
かりにだにとはれぬ里の秋風に我が身うづらの床はあれにき
わびはつるわがおもひねの夢路さへ契りしられて吹くあらしかな
来ぬ人をつきせぬ浪にまつら船よるとは月のかげをのみみて
形見ぞと頼みしことのかひもなきうき中のをの絶えやはてなむ
みしかげよさてやまあゐの摺り衣みそぎかひなきみたらしの浪