夜景10 正月の幻想

  

新年明けて僕は3本のビデオ映画を見た。
僕が人生で一番大切な映画と言える作品。
それは僕の友 Jがまとめた僕等 僕等の旅の記録映画 3部作
あいつは器用だったからBGMを入れて編集して作品にした。
そこには、僕等2人の旅
僕等のくったくのない笑い顔があった。
最後のシーン僕がこのページの写真の場所で、
バイクカワサキのKR−1Sで走って行き、それをJが車の中のカメラで撮影した。そんなシーンに、
佐野元春の「SOME DAY」が流れ、この作品、そして6時間もの3部作が終わる。

作品の中で僕等はこんな会話をしていた。

ビデオの最初と最後をつなぎあわせると、僕らの旅は永遠だと、

僕等が死んでからも旅が続けられると、

それはまるで何時かは終わる旅を二人どこかでわかっていた言葉だった。
でも、まさかこんなに別れが急だなんて思ってもいなかった。

3部作のラストシーンが近くなったころには、スコッチボトル一瓶空になっていた。

そんな時、ソファアの上に座っている僕にJの幻が見えたような気がした。

Jの幻は僕に笑いながらこう言った。

「シュウちゃん 血 でてるよ 」

僕は笑った そう この言葉を僕は何度聞いただろう

中学の時、自転車で転び、肘から。
高校の時 バイクで転倒し膝から。
大学の時、野宿用の薪を捜して時、棘でつけた首の傷から、

僕が血を流しながらでも笑っていたから、気が付いてないの?という顔をしながらJはいつも聞いてきた。

 J 久しぶりに聞くお前らしい質問だよ

「 J?でも どこもケガしてないよ 」

「  シュウちゃん
   傷だらけなのは 血が出てるのは シュウちゃんのこころ だよ」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

そうか 今のお前には 見えるのか僕のこころが?

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

でも、そうだとしても 僕はそれを今 治療しようなんて思っていないよ

治療しても完治することなんてありえないし、傷を癒す時間には人の生は足りなすぎる。

人生幾つあったって足りはしないよ。

だから血が流れているなら、流れるかぎりながれりゃいいのさ、

この命が尽きるまで

でもそれもそんな長いわけでもないだろう

  こころの傷。

今迄 生きてきた証明。

僕のこころの存在の証明。

僕はJの幻に言った。いつもの台詞を、

いつも あいつに言ってように 笑いながら

.
「 大丈夫さ。 ほっときゃいいんだ。 」

.
Jの幻が笑ったような気がした。

「 相変わらず シュウジ らしいよ 」 と

グラスが転がっていた

ふと気がつくと、泥酔して焦点が合わないテレビ画面に ラストシーンがながれていた

僕はこの夜景の道をバイクで走っていた、

Jが車の中から、一人で走る そんな僕を撮影した映像だった。

僕は いつも うまく泣く事ができない

でも涙がとまらなかった。涙が頬から首をつたい。

シャツの襟をくぐり僕の胸、心臓のあたりまで流れる感覚がわかった。

ありがとう J 僕に前を歩ける 言葉を言わせてくれて

ラストシーン

  

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