年ごとに 生ひそふ竹の よよをへて たえせぬ色を 誰とかはみむ
いたづらに おいにけるかな たかさごの 松やわがよの 果てをかたらむ
うばたまの わが黒髪を 年ふれば 滝の糸とぞ なりぬべらなる
春霞 たちよらねばや みよしのの 山にいまさへ 雪のふるらむ
いつしかも 越えてむとおもふ あしひきの 山になくなる 呼子鳥かな
あしひきの 山下たぎつ 岩浪の 心くだけて 人ぞ恋ひしき
うぐひすの 花ふみしだく 木の下は いたく雪ふる 春べなりけり
浦ごとに さきいづる波の はなみれば 海には春も 暮れぬなりけり
梅の香の かぎりなければ をる人の 手にも袖にも しみにけるかな
訪ふ人も なきやどなれど 来る春は やへむぐらにも さはらざりけり
雪やどる 白雲だにも 通はずば この山里は すみよからまし
玉藻かる あまのゆきかひ さすさをの 長くや人を うらみわたらむ
このやどの 人にもあはで あさがほの 花をのみ見て われやかへらむ
うつろふを いとふとおもひて ときはなる 山には秋も 越えずぞありける
年月の かはるもしらで わがやどの ときはの松の 色をこそ見れ
ひさかたの 月影みれば 難波潟 潮もたかくぞ なりぬべらなる
つなて解き 今はと舟を 漕ぎ出でば われは波路を 越えやわたらむ
山高み こずゑをわけて 流れいづる 滝にたぐひて 落つるもみぢ葉
ささのはの 冴えつるなべに あしひきの 山には雪ぞ 降りまさりける
君まさば 寒さも知らじ みよしのの 吉野の山に 雪はふるとも