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     2000年 大島哲蔵さんと佐藤敏宏の私信交換   home 

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2000年3月4日12:03

佐藤敏宏様

千万家のプロセスはとても良い企画です。建築が建っていくプロセスと工事の人達と見守る発注の人とか外野が設計者の播いた種の回りに集って育て上げていくのがファインで、それこそ本物のエコハウスではないでしょうか。

ペローが福島県で起用されるなんてビックリです。またババ当たりが選者にかんでいるのでしょうか。ともかく彼の福島県での最大の理解者は貴君ですし、私も当然のことながら乗りだします。青森県ミュージアム以上に口出しします。から嫌わないようにしてください。

ところでアオキジュンの案をみました。私はイトウもアオキも嫌いなのですが、この案が選ばれたことには異存ありません。と言うより、私がシャドージュエリーでも言ったように、これまでの建築家が必死になって作った案とは違って、全くイージーな案作りですが、それなりに良く出来ていて、軽く流していて現代の感覚がちゃんと盛り込まれています。(大阪にこういう神経の乗りの人は居ない)

ワタナベさんは「下らない」と言ってましたが、この「くだらなさ」それにも関わらず行き届いた配慮で作られている点が良いのであって、私が審査してもこうした案を確実に選んでいたと思います。(無名の人だったらなお良かった)結果的に大阪の中ではホンダ案が一番それに近かったと思います。ではまた。大島哲蔵



2000年3月10日 16:53

大島哲蔵様
昨夜は雪でとても寒かったのですが今日は日差しも春の色になり暖かな気分です。
昨夜は電話いただきまして有り難うございました。ナガサカさんの話は面白かったです。精神病院の構造と都会のワンルームマンションの置かれている状況が似ているとの指摘、もっともだと思います。

都市のそれは消費することを前提に緩やかに拘束して、病院のように強制収容の様子とはかけ離れているよに見えますが、根底では繋がっているようです。個電などの機器が地球を巨大な収容施設に変えるのか、原始社会のような孤独と自由をもたらすのか、興味がわきます。

買わないことによって消費構造を解体することも出来そうですから、都市のワンルームマンションの方が多くの可能性を秘めていると思います。違った角度から見ると、都市が一人で生活する 多くの若者によって支えられてると想像すると、何とも将来はのんびりしたものにはなりそうに ならないことは確かなようです。

朝日ファイン刷り上がりましたので送ります。逆からの眺めが煎餅を畑に播いたようで楽しいのですが、編集長は阿武隈の山並みとの対比を選んだようです。 文章は私の言葉が編集者を介してどんどん変形するのが楽しいです。人それぞれに関心の置き方が違うので当然です。こんな小さな記事でもなぜか良いことをしているんじゃないかと思ったりします。

私欲に走った記事にならないよう何度も注文を付けています。読者の建築観が少しでも幅広いものになり建築家を刺激する存在となることを期待するのみです。

●2000年3月11日 0:19
> 佐藤敏宏様
>
> モーフォシスのプロジェクトはポジティブですからやはり人気があります。
> 時代的には少し前なので、今時の若者はあまり知らないでしょうが。
>
> ニュースが出るたびに掲載するだけですが、それでもたまに問い合わせがあります。おもしろいページを作れるかどうかですね。多分毎日対応に追われることはないでしょう。
>
>今度の日曜はクボセイイチという建築家の新作を四国まで見に行くことになっています。作品はともかくウドンを喰うのが楽しみです。
 
>それではまた。
>
> 大島哲蔵
>

●2000年3月16日13:37

大島哲蔵様

先ほど朝日ファインを送りました。見てくださいませ。スクオッターニュースNO28のモーフォシスの建築は文面から察すると若者に受けそうな気がしますがいかがなんですか。

ホームページを開いていらっしゃいますが、更新などの管理はどうしているんですか。私もどうしようか迷っています。開きっぱなしだといい加減な気がしますし、毎日管理更新するんじゃ大変そうでからね。

メールを送ってみます。

● 2000年3月16日16:57
大島哲蔵様

エコハウス(環境共生住宅)の要項が届き眺めました。事務局が外注先の設計事務所で委員長はペロー、審査員 ハギワラなつこ(環境社会学)コーディネーターはフチガミです。

博覧会会場の一部に作る。実施設計は色々なアイディアを寄せ集めあらかじめ決まった設計事務所が行う。

あまり良くないコンペの様な気がしました。アイデアに困った博覧会請負設計事務所が安価で多くのアイデアを手に入れ、それをお決まりの事務所が実施設計する。そのように読みとれます。

ほんとにペローが審査するか怪しいです。2段階審査までして、最終審査10点は模型(1/30)も作らせる。博覧会会場に賞金(20万)引き替えた模型を飾る。実施の美味しいところは頂く。ペローが二度も日本に来てチャチイコンペの審査をするとは思えません。

事務局はペローが最終審査に来るとは言っているが全体計画に携わったとは聞いたことがないのです。ペローは福島見物にでも来るんでしょうかね。

大島さんは京都で話したそうですが、直接メールで聞いてもらえるとありがたいです。

インチキコンペくさくても私は条件違反で出す予定でいます。存在を知らせることを目的にしたほうが良いようです。


●2000年3月17日8:10 
佐藤敏宏様

このコンペは残念ながらエセコンペですね。勝手にこちらの考えでやることですね。こんごのたしになるような考えを提出しておくことでしょう。ペローにアピールする内容であれば問題ないでしょう  こないだの「果樹」を発展させたものか、ガラスの透過率を自由に調整できるタイプを使って生命体としての環境を作ったらどうでしょう?

スケッチができたらFaxしてください。

             大島哲蔵より


●2000年3月19日 16:02
大島哲蔵様

コンペのことはそのようにします。家樹を発展させ、笑えるエコハウスにします。

頂いたペローの作品集を何度も眺めて感じてみます。生体的家樹ですね。あまり直接的な表現にならないよう、プレゼンの練習をしてみます。

メールは慣れましたか。手書きと違うので、いちいち変換するところが何とも中断されるようで戸惑いますよね。紙の整理と違い楽ですね。ではまた。


2000年3月19日18:46

> 佐藤敏宏様
>
> 韻を含んだーというのはその通りでしょう。しかし日本の地方のコンペで自身がやるようなコンセプトを期待しているとは思えません。
>漫画と言ったのは、彼にとってエキゾチックな土俗的日本のイメージを取り入れてプレゼンするということで、その部分は福島のローカリテイを前面に押し出した方が良いと思います。
> サイトウさんは地元の人らしいイメージを持っているので、モダンを超える部分のシチュエーションまたは物語として展開をつけたほうが良いです。
>
> 空想は漫画のようではなく、その展開と提示が濃密でないといけません。
> 要するに、この種のコンペに自身のような鮮やかさ期待していないわけです。
>
> 大島哲蔵
>
>

200年3月25日2:19

大島哲蔵様

朝日ファイン今日刷り上がったので又送ります。エコハウスについて何度もFAXいただき有り難うございます。

今回のコンペの曖昧さと環境の定義の曖昧さ、両方からいまいち腰を据えて取
り組む気になれないで、道草を食っています。

道草は1956年8月に竣工した、前川國男作福島県教育会館の調査です。県
教組が発注者です。現在無惨な外観をとどめながら使用されています。

大高正人の元気な手記も手に入れました。設計者発注者共に、理想目標だけは
耳障りが良かったとみえて、県下の職員17000人が毎月給料の1割を提供
し工事費の7割を負担しています。

「文化の殿堂」と聞化されると恥ずかしいですが、当時は中身もろくに健闘せ
ずに、箱を作れば殿堂になると思ったようです。今も少しも変わらないかもし
れませんが。

大高氏の手記はその後の彼の建築を見ると考えられないですが、現在にも通用
します。今の彼が聞いたら、理想主義者めと軽蔑することでしょう。

記録は残すべきですね。歴史が評価を下すと大高氏は書いています。もう少し
調査しまとめてみます。いずれ報告いたします。

話変わりますが。竹で建築を覆い尽くす事についてっですが、作家の視線から
見ると、将来性が無いと思いますが、竹(植物の生命力)の視線から見ると建
築家の脳細胞を養分として繁殖したのですからすごいことになるのではないで
しょうか。

計画性について教育会館を調査して視線が変容しだしたのでしょうか。




●2000年3月25日

大島哲蔵様

長いニュースと教育会館の助言ありがとうございました。会館の方は発注者・設計者それぞれの計画性の違い又はズレが時を経るごとに露わになり、関係のない私にさえ見えてしまうので可笑しいのです。前川氏や大高氏に興味があるわけでは無いのです。

計画性のズレと言っておきますが、これはあらゆるところで生まれているようで、滑稽であり悲劇的であります。当事者に連絡し質問するといやがりやがて怒り狂うので、ますます他人(建築)の不幸が可笑しくて深みにはまります。不謹慎な事ですが笑わずにはいられないのです。ノンキナことで申し訳ありません。 我が家に起きた狂気劇が思い出すと可笑しいようにです。その源は計画性のズレです。又人が悪くまた呑気なことになりました。



●200年3月25日 21:45

佐藤敏宏 様

エセハウスのエココンペはどうでも良いのですが、将来につながるバカな提案をして欲しいと思っています。

私も以前はマエカワなど数少ないまともな作家の旧作を見て気持ちが動きましたが、今は当然のことですし、その調査など暇つぶしでしかないようにおもいます。

オオタカはいつも言うことだけ一人前で、良心的なウチイという感じで情けない人です。(もう少し頑張ればまともなアーキテクトになれたのにという意味)

竹のお話はそのとうりですが、提案者のレベルとは関係ないですし、日本人がすぐ「間」とかマンダラ(実はインド)言うのと同じで紋切り型のアジア主義ですね。

ホンコンシャンハイBankの竹足場とか100年に一度花が咲いて一斉に枯れるなどに着目して、もっと新しいイメージや知覚を刺激しないといけません。(現にヌーベルがそれに近いものを発表している) ヌーベルは東京二国でもミカド案で気を吐いていた。

それではファインを楽しみにしています。エコこんぺは住宅はハウスメーカーの一番標準タイプにしてビオトープに船を浮かべて、そこを植木鉢のように考えて樹を載せ、日照の具合で綱を手繰って調整するような仕掛けで十分でしょう。

では又     大島哲蔵





●2000年3月30日9:41
佐藤敏宏様
今日は無理な頼みをお願いします。昨日太郎君の作品(500万円のホールの改造)を見に行き教え子たちとヨシダヤスオが参加しており、例によって何人かがヨシダファンになりましたが、「彼の作品を見たい」というので例の差し上げた本を送って下さいませんか。一旦差し上げたものなので、また後日再送させてもらうのか、彼は「もう余程のことがない限り建築はやらない」といっているので、資料として手元に置こうかとおもっています。(こいいう作家がいたのだということを若い人に知らせるために)ちなみに最近かれは楽器をつくっています。親しさに甘えて無理をいいますが御笑諾くださいれば幸です。
では又  大島哲蔵

ps ペローのコンペは内容が問題有りなので私の意見とは関係なく好きなように対処してください。マジメにやってもよい結果は得られないように思いますので。(これは「私として」で地元の建築家である佐藤さんにとってはどんなインチキコンペでもそれなりの解答を寄せる必要があり、というのが私の意見です。

2000年3月30日17:07

大島哲蔵様

本の件ですが、残念ながらありません。お役に立てず申し訳ありません。

コンペの問題はご指摘のとうりです。地元なので参加いたします。県の職員の方も参加するので合評会をしようと考えています。当落は別問題です。

千万家はなかなか工事が進まないので、4月末の完成に向け心配です。

小さなアトリエの増築は今週中完成します。地味な建築ですが既存との関係は巧く行ったので、これからの計画手法に役立ちそうです。

BOX4の増築のような敷地全体の計画の仕事が始まりそうです。12年前の建築で、子供が成長しているのでちょっぴり戸惑いますが、BOX4は少しも変わらないのが良いです。

全体の敷地は500坪ほどでBOX4や共同住宅が建っていて、残地の活用計画のような、建築と周囲の景観のような広がりのある計画にしようとおもいます。

変わりますが、高校の先生から講演依頼があったりして、少し社会との関わりあいが出てきそうです。また地元の進学校の建築家志望生徒にアドバイスをたのまれたりしています。大人が将来にビジョンを示さない環境に置かれている時、若者は何から世界をとらえるのか興味がわきます。


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