和歌と俳句

大江千里

わびて住む宿に光のくれゆけば吹く風のみぞとざしなりける

照りもせず曇りもはてぬ春の夜の朧月夜にしくものぞなき

かささぎのみねとびこえてなきゆけばみ山かくるる月かとぞ見る

雲はれてきよき月かげつねならずあらむかぎりはをしみこそせめ

ふたつとも見えぬを月の山ごとに照りわたりつつあきらけきかな

あつからずさむくもあらずよきほどに吹きける風は止まずもあらなむ

さだめなく吹き来る風をさしわけてなどかしづけきひとにつぐらむ

照る月のみやこに道はありといへどたづねてゆかむ方ぞ知られぬ

をしみてもとめまほしきを春風の吹きすぎがたになりぬとおもへば

雲もなくあかき山さへはれゆけば水の色こそあらたまりけれ

白雲の中をわけつつゆくくれのめでたきことはやまにぞありける

とひしりて雲のかけはし越えゆかむいづれのかたか山はさかしき

ゆく水のあをき山より落ちくれば白雲たつとみぞまとはるる

よそにても花をあはれと見るからに知らぬ宿にぞまづいりにける

さしわきて深くあはれと見えつるははれてしづけきところなりけり

かげしげみ水のほとりは年を経てすぎきぬれどもあかずぞありける

吹く風の光をとめむと思へばぞしばしも春にあそぶべらなる

あやなくも年のをながくひとりしもあくがれわたる身とやなりなむ

あまつ空たかくはれつつ見えつれば暮れゆく春もとほくぞありける

限りとて野辺のはるけく見えゆけば立つ白雲も深くぞありける