露むすぶ 秋はいくかに あらねども をかの葛はも 色つきにけり
まだきより けしきのもりの した紅葉 なべてならずも 見えもするかな
紅葉する おなしみ山の こずゑにて ひとりさめたる いはね松かな
千載集・秋
いまぞ知る 手向の山は もみぢ葉の 幣と散りかふ 名にこそありけれ
小倉山 木々の紅葉の くれなゐは 峰の嵐の おろすなりけり
もみぢ葉も 麓のちりと なりにけり 難波のことも はてぞ悲しき
やまおろしに よもの垣根や いかならむ 紅葉のみこそ 曇りなりけれ
ふみわくる 山のしたくさ うら枯れて 秋のすゑはに なりにけるかな
秋の野の 花ふき乱る 夕風に 袂よりさへ 露ぞこぼるる
ゆふひさす 秋の田の面を 見わたせば 穂なみぞ風の ゆくへなりける
なく虫の 命とみゆる 秋なれば 暮るるはさこそ かなしかるらむ
おしねかる 山田のひだに ことよせて 過行く秋を ひきもとめばや
おほ空は 秋のわかれを 思ふらし けふのけしきは うちしぐれつつ
千載集・秋
竜田山松の村立ちなかりせばいづくか残るみどりならまし