胸のうちよしれかし今もくらべ見ばあさまの山はたえぬ煙を
しるべしてなるる心のかひぞなき君をおもひの積もる年年
かはり行く袖の色こそ悲しけれ音をなくはてよ秋の空蝉
今はみな思ひつくばの山おろしよしげきなげきに吹きもつたへよ
かたみかはしるべにもあらず君こひてただつくづくとむかふおほぞら
たれゆゑにたえぬとだにも白雲のよそにややがておもひ消えなむ
面影はたつたの山の初もみぢいろに染めてしむねぞ焦るる
おくるよりなげきぞいとど數まさる空しき日のみ積もるあしたは
露時雨さてだに人に色見せよ眺めしままの末の浅茅に
なり見ばやしばしも影をやどすやと手に結ばるる水の泡とも
おのづから春過ぎばとも頼むらむくもにつけたる鳥の古巣は
玉鉾の行くての道もすぎわびぬ思ふあたりのやどの梢は
乱れあしの下のこひぢよ幾世へぬ年ふるたづのひとり鳴くそら
人ごころ霜の枯葉に里ふりてやがて跡なしもとのよもぎよ
いとどしくたえぬなげきは末の松われよりこゆる波の高さに
いかさまにさきかとどめむ色かはる人の木の葉の末のしらなみ