をちの山こなたの空のむらしぐれくもればかるるころのうき雲
家居する外山が裾のかみなづきあけぬくれぬと時雨をぞ聞く
木の葉ちる板まの月のくもらずばかはる時雨をいかに分けまし
月やそれすこし秋あるまがきかな深き霜夜の菊の薫りに
さびしとよおき迷ふ霜の夕まぐれをがやのこやの野邊一むら
物おもはぬ人のきけかし山里のこほれるいけにひとりなく鴛
はし鷹のかへるしらふに霜おきておのれさびしき小野の篠原
かつ見つつわが世はしらぬはかなさよ今年もくれぬ今日も昏るるを
ゆく年のさのみ過ぎ行くはてよさはいづれかひとつ帰るかはなみ
雲さえて峯のはつゆきふりぬれば有明のほかにつきぞ残れる
山ふかき雪やいかにと思ひ出づる情ばかりの世こそ難けれ
いとどしく山ゐの袖やこほるらむかへる川風身に寒くして
雪うづみ氷ぞむすぶをしかものかげと頼めるいけのま菅を
炭がまや小野の里人あさゆふは山路をやくと往き還りつつ
かきくらす都の雪も日かずへぬ今朝いかならむ越の白山
思ふとていふかひもなき大空にすゑばや年のこえぬ関とて