和歌と俳句

源信明

五月雨は 君にやありけむ ほととぎす 人知れぬ音を ここら啼きつる

いかでかは きき咎めつる ほととぎす 人知れずこそ 音をば啼きつれ

ひとやりに あらぬことにも あらなくに 身もいたづらに なりぬべきかな

身を捨てて 思ふと見しは いたづらに なるべきことに かこたれもせむ

いつはりを かれならはして かぎりなき わがまことをも 疑はすらむ

世の人の おなし心に あらばこそ 皆おしなべて いつはりもせめ

たまさかに まことやすると 君ならぬ 人してよをも 知らせてしがな

身の上に 人の心も 知らぬまは ことぞともなき 音をのみぞなく

君だにも ことぞともなき 涙をば いかに知りてか あはれと思はむ

明くるまでと 思ふ時だに あるものを なくなく疾くも かへるべきかな

わが思ふ 心まだき かへる間も 深くはあらぬ なかにぞありける

今日の内に 否ともうとも いひはてよ ひと頼めなる ことなせられそ

今といひて かりの心も 見るべきを かひなき人に 頼めつるかな

かくなむと 人知るらめや 行く道も 心とどめて 思ほゆるかな

ゆくみちも とまらばとまれ 知るとても やるべきことの 心ならねば

はやくこの かみの十日も 過ぎななむ 二十日にてだに 三十日なりやと

二十日にて 三十日ならむとも 覚ほえず のちや四十日に ならむと思へば

涙とも 雨ともわかず おほかたに 我はふるとも 人は見るらむ

涙とも 知らぬ先より うへこそは 常より疾くも ながめられけれ

知らねども おなし心に ながめける ことばかりをぞ あはれとはきく