和歌と俳句

源信明

契りけむ 日をも過ぐさじ たなばたは わが如かくや 思はざりけむ

たなばたの 契りけむ日は 過ぐすとも たとふべしやは こともゆゆしく

ゆゆしとも 思はざりけり たなばたは 忘れぬなかの あらまほしさに

数ならぬ 心のうちに いとどしく そらさへゆるす ころのわびしさ

我をこそ 世に見苦しく 思ひしか 人はいかなる 心なるらむ

逢ひも見ず ことをばいはむ 方もなし たかつけそめし 病なるらむ

かひもなき 君によりつつ くだくれば 心もなくも なりぬべきかな

うきまさる わが身も知らで よそにのみ ききしむかしに かへしてしがな

いたづらに たびたびごとに 死ぬといへば 逢ふには何を かへむとすらむ

後撰集・恋 中務
いたづらに たびたび死ぬと いふめれば 逢ふには何を かへむとすらむ

後撰集・恋
しぬしぬと きくきくだにも 逢ひみねば 命をいつの ためにのこさむ

中務
はかなくて おなし心に なりにしを おもふることは おもふらむやは

後撰集・恋 中務
はかなくて おなし心に なりにしを 思ふがごとは 思ふらんやぞ

後撰集・恋
わびしさを おなし心と きくからに わが身を捨てて 君ぞかなしき

夜もすがら 風もすずしく 吹くころは 心ことにて 待たじとやする

涙かく まつのかかれる よにやあらむ たのめて行くぞ なびかずといふ

すゑのまつ むかしよりまつ 君をおきて 涙たかくとも 越さじとぞ思ふ

あかつきの 別れはをしの かがみかも おもかげにのみ 人の見ゆらむ

そめて思ふ 色は深きを くちなしの いはれぬ色と 人や見るらむ

あたらよの 月と花とを おなじくは あはれしれらむ 人に見せばや

後撰集・春
あたら夜の 月と花とを おなじくは 心しれらん 人に見せばや

君ならで 誰にか見せむ 梅の花 色をも香をも 知る人ぞ知る

急ぎけむ 心のうちを 知らぬかな もしももしきに とこやさだむる