和歌と俳句

紀友則

朝露を わけそぼちつつ 花みむと いまぞ山辺を みなへしりぬる

古今集・物名
朝露を わけそぼちつつ 花みむと 今ぞ野山を みなへしりぬる

みよしのの 吉野のたきに うかびいづる 泡をか玉の 消ゆと見ゆらむ

古今集・物名
みよしのの 吉野のたきに うかびいづる 泡をか玉の きゆと見つらむ

秋ちかう 野はなりにけり 白露の おけるくさはの 色かはりゆく

古今集・物名
秋ちかう 野はなりにけり 白露の おける草葉も 色かはりゆく

わがやどの 花ふみちらす 鳥うたう 野はなければや ここにしもくる

古今集・物名
わがやどの 花ふみしだく とりうたん 野はなければや ここにしもくる

君といへば みまれみすまれ 富士の嶺の めづらしげなく もゆるわが恋

われを君 おもひつくはの 山のはに いりといりなば かへらざらなむ

拾遺集・冬
とひかよふ をしの羽風の 寒ければ 池の氷ぞ さえまさりける