竹をしも おほくうゑたる やどなれば 千歳をほかの ものとやはみる
おぼつかな いまとしなれば おほあらきの もりのしたくさ 人もかりけり
霜枯れに なりにし野辺と しらねばや かひなく人の かりにきつらむ
神まつる ときにしなれば さかきばの ときはのかげは 変はらざりけり
雪のみや ふりぬとはおもふ 山里に われもおほくぞ 年はへにける
新古今集・冬
雪のみや ふりぬとは思ふ 山里に われも多くの 年ぞつもれる
あれひきに ひきつれてこそ ちはやふる 賀茂の川波 うちわたりけれ
ほととぎす なくなるこゑを 早苗とる てまうちおきて あはれとぞきく
たきつせの ものにぞありける しらたまは 来るたびごとに 見ぬときぞなき
よにかくれ きつるかひなく もみぢばも 月にあかくぞ てりまさりける
春霞 たちぬるときの けふ見れば やどの梅さへ めづらしきかな
わかやどに さける梅なれど としごとに 今年あきぬと おもほえぬかな
野辺なるを 人やみるとて 若菜つむ われを霞の たち隠すらむ
雨とのみ 風ふく松は きこゆれど こゑには人も 濡れずぞありける
やまふかき やどにしあれば としごとに 花の心は あさくぞありける
いたるまに 散りもぞ果つる いかにして 花の心に ゆくとしられむ
ゆかりとも きこえぬものを 山吹の かはづがこゑに にほひけるかな
ゆく月日 おもほえねども 藤の花 見れば暮れぬる 春ぞしらるる
さつき来る 道もしらねど ほととぎす なくこゑのみぞ しるべなりける
ひととせを 待ちつることも あるものを けふの暮るるぞ 久しかりける
新古今集・秋
たなばたは 今やわかるる あまの河 かは霧立ちて 千鳥鳴くなり