たまほこの 道もゆかれず ほととぎす なきわたるなる こゑをききつつ
わが身また あらしとおもへど みなぞこに 覚束なきは 影にやはあらぬ
はらへても はらふる水の 尽きせねば わすられがたき 恋にざりける
照る月を 見ざらましかば うばたまの 夜はものへも ゆかずぞあらまし
大空は ひもなけれども たなばたを 思ひやりても ながめつるかな
みやこまで なつけて引くは をがさはら へみのみまきの 駒にぞありける
秋くれば はたおるむしの あるなへに からにしきにも みゆる野辺かな
山ちかき ところならすは ゆく水も もみぢせりとぞ おどろかれまじ
いでて訪ふ 人のなきかな はなすすき わればかりかと まねくなりけり
うゑてみる 菊といふ菊は 千代までに 人のすぐべき しるしなりけり
あしひきの 山あゐにすれる 衣をば 神につかふる しるしとぞみる
くさきにも はなさきにけり ふる雪や 春よりさきに 花となるらむ
松が枝に つるかとみゆる 白雪は つもれる年の しるしなりけり