TopNovel>世界の果てまで追いかけて・11




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 今のあたしたちはかなりの非常事態の中にいて、だから、これからのことをたくさん考えなくちゃならない。でも、そういうのもいったん脇に置いておいて、もっともっと大王のそばに行きたいなとか思っちゃったんだ。
「馬鹿、これ以上の体力を消耗してどうする。……本気で死ぬぞ」
  急に先輩面してそんなこと言うんだもの、ずるいよなー。
「だっ、……だって……」
  こんな風におねだりしたの、初めてだよね?
  いつもは大王が勝手に始めて、あたしはただ言いなりになってるって感じなのに。どうして今日のあたし、こんなに積極的なんだろう。
「高宮葵より、あたしの方がいいんでしょう? そうなんだよね、だったら……それを態度で示して」
  いきなりあの女が「私は衛の婚約者よ」なんて現れて、本当にびっくりしたんだから。
  そりゃあ、あたしたちってお互いに合意して始まったわけじゃないし、気がついたらいつの間にかそんな風になってたけど。でも、それでも、あたしは決してこんな関係を嫌だとは思ってなかった。
  とりあえずおなかは膨れたし、すごく元気になった。それに大王がいなくてふらふら落ち着かなかった心が安定して、そしたら……もっと気持ちよくなりたくなってる。今度は身体の方も。
「大王が悪いんだよ、あたしを不安にさせるから。だから、責任を取ってくれなきゃ、やだ」
  あたしを抱きしめていた大王の腕が、一瞬大きく波打ったのがわかった。もしかして、動揺していたりする? えへへ、こういう大王ってすごく新鮮かもっ。
「まったく、お前の馬鹿げた思いつきには呆れるばかりだ」
  はあって、大袈裟に溜息ついたりして。そういう風にして気持ちを外側に追い出そうとしてるんでしょ、でもそうはいかないからね。
「でも……本当に、このまま最後かも知れないし」
  考えたくはないけどさ、そんなこと。あと何日か誰にも気づかれないままで放置されて、最後は衰弱して死んじゃったりしたら―― とか、ちょっとは想像しちゃうじゃない。
「そんなこと、冗談でも考えるな」
  大王はすごく怖い声で、吐き捨てるみたいにそう言った。でも次の瞬間にはあたしの前髪をかき上げて、額にキスする。
「あとから後悔したって遅いからな」
  あたしを抱えたまま大王は身体をずらして、壁際のギリギリのところまで移動した。そしてあたしの身体を持ち上げて自分の太股の上を跨がせるように座らせると、もう一度ぎゅーっと抱きしめる。
  身体と身体が隙間なくくっつくことで、皮膚の下の無数の細胞がぷちぷちと音を立ててる気がした。一気に新陳代謝が活発化したとかそういう感じ? 一緒にいるだけで身体の内側から反応しちゃうなんて、やっぱり大王は化け物なんだな。
「そっ、そんなことないもんっ!」
  大王の方こそ、挑発しすぎだよ。しかもすごく身体が熱いし、見上げたらいつもよりももっとえっち臭い表情しているしっ。
「相変わらず、口の減らない奴だな」
  大きな手のひらがあたしの頬を包み込む。あっと叫ぶ間もなく口が塞がれて、大王の舌が艶めかしく侵入してきた。ぴちゃぴちゃと水音を立てながら自由自在にあたしの口内を暴れ回るそれに翻弄されて、あたしの頭の中はぼーっとしてくる。
  身体の力が抜けて安定感がなくなっても平気。ちゃんと背中を大王の片腕が支えてくれてる。そしてもう一方の手のひらはあたしのブラウスのボタンを外し終えて、次にもっと下の方、足の付け根の辺りに滑り込んできた。
「あっ、……やぁんっ……!」
  いきなり、ぱんつの内側に指を這わせるんだもの、びっくりするじゃない。思わず逃げそうになった腰を、後ろからがっちりと押さえ込まれる。
「もうこんなになりやがって、よくもまあこんな状況でさかりづけるもんだ」
  そう言う大王もすごく嬉しそうじゃない。はだけたあたしの胸元に顔を埋めて、そこから胸のてっぺんに向けて舌でなぞっていく。色づいて硬くなったその部分を舌の先で突いて舐め回して、それから口に含んだ。そして一気に吸い上げられたら、もうたまらない。
「ひっ、ひゃあっ……! ちょっ、ちょっとおっ! やめてっ、そんなにしたら千切れちゃう……!」
  かなりデリケートなゾーンなんだからね、もうちょっとやさしく扱ってよっ。足の付け根を探ってる指も容赦ないし、いきなりギリギリ状態に置かれてるあたし。
「何、悦んでいるんだ。……この好き者が」
  首の角度が変わるたびに、その無意味に長くて量の多い髪があたしの身体のあちこちに這い回る。そっちの感触もこそばゆくて、どうしようもない状態。
  何しろあまり動きを大きくすると危険でしょう、絡み合ったまま、水の中に転落なんて絶対に嫌。そう思うといつも以上に身体が密着して、隙間を探すのも大変になってくる。
「やっ、やぁん、やんっ! ……そこはっ、やめてぇっ……!」
  あたしの内側、特に感じやすい場所。大王はとっくにわかってるそのポイントを何度も何度も執拗に刺激する。そのたびにギリギリいっぱいになる気持ちをどうにか逃そうと頑張ってはみたものの、とうとう大きな波に掴まってしまった。
「ひっ、ひゃっ、ひぁあんっ……!」
  大王に身体をがっちりと包まれたまま、あたしは最初の絶頂を迎えていた。そこまでで、もう息も絶え絶え、顔は涙でぼろぼろになってる。自分では確認できないけど、髪だってきっとすごいことになってるはず。
「……だっ、大王っ……あたしっ、もう……っ!」
  こういうのを「飼い慣らされている」って言うんだと思う。自分から腰を押しつけておねだりするのって、すごく情けない。
「何を言う、まだまだ行けるだろう。そら、今度は片足を上げてみろ」
  なのに大王は、あたしの身体を斜めにするとまた指をその部分に滑らせる。そして敏感な蕾を探し当てると指の先でつまんだりつぶしたり。そうされることで、あたしはまた新しい快楽に取り込まれていく。
「やっ、……やぁんっ、っんんっ……!」
  むき出しの岩肌にいくら爪を立てても、気を逃すことはできない。あっという間にたかみに達して、あたしは再び絶叫した。その声が、ふたりの息づかいが壁の内側に幾重にも反響してなんとも異様な感じがする。まるであたしと大王がどんどん増殖して、いろんな場所でえっちなことしてるみたい。
「……いやっ、大王っ……もうこんなのっ、いやっ……!」
  何本にも増えた指があたしの中を自在に翻弄していく。救いのない世界の中で、それでもさらなる悦びを求めているあたし。苦しくて切なくて、このままだとどうにかなってしまいそうだ。
「ねっ、ねえっ! 大王っ、大王ってば……!」
  気づけば今度は後ろ向きになって、大王の方へとおしりを突き出している。その状態で再び指を差し込まれそうになって、あたしは思わず叫んでいた。
「もういいでしょ、……いい加減にしてっ!」
  何度も何度もイかされつづけて、それなのによくもまあこんな力が残っていたと自分でも感心する。あたしはどうにか大王の束縛を振り切ると、できる限り身体を後退させた。とりあえず、すぐには次の行為が行えないような位置まで。
「莉子?」
  大王にはあたしの怒りの意味がまったくわかってないみたい。だから悲しいからじゃない涙の粒が頬をぽろぽろこぼれていくのを、すごく不思議そうに見つめている。
「……やっ、やだ! いつまで、こんなにしてるの嫌っ! なんでっ、あたしだけ!? どうしてなのっ……!」
  この期に及んで、直接的な指摘ができない自分がいる。まだあたしにも、ちゃんと乙女な感覚が残っていたらしい。そのことに自分でも驚いてみたりして。
  ―― だって、大王。いつまでたっても、いれてくれないんだもの。
「指だけじゃ、やだ。……あたし、大王のが、欲しい……!」
  おかしいよ、いつもだったらこっちが準備も整ってないうちからばんばんいれてくるのにっ。何で、今日はそうじゃないの? 知ってるよ、あたし。大王だって、とっくにすごいことになってるってこと。なのに……そんなのって、変。
「―― 否、それはまずい」
  それなのに、ここまでわかりやすく説明してあげたのに。それでもまだ、大王は首を横に振る。それから、かなりトーンを落とした声で続けた。
「今日は、何も準備がない、だから無理だ」
  そのときのあたし、ずいぶんとせっぱ詰まった状況だったみたい。だから、最初は大王が何のことを示しているのかがまったくわからなくて、そのあと一呼吸を置いてから「ああ」と思い当たって一気に脱力した。
「……えと、そんなこと気にしてたの?」
  えーっ、嘘。この期に及んで?
「そうだ、一番大切なことだ」
  なんか、急に真面目くさった顔になってますけどっ。元はといえば、この関係が自分のレイプまがいの行動から始まったということもすっかり忘れてしまってるみたい。まあ、あのときだって確かにつけるものはつけてたみたいだけど。
「なっ、何で今そんなこと! だって、あたしたちには明日とか未来とかそういうの、ないかも知れないでしょう? なのに、どうして我慢するのっ! そんなのって、絶対におかしい……!」
  一度は自分から離れたくせに、今度はずいずいって近寄ってしまう。そうすると、一方の大王が後退したりしてね。いつもは偉そうな男が、腰が引けてる姿って言うのもなかなか新鮮ではある。
「ホントはしたいんでしょ? だったら、我慢なんてやめようよ! 一緒に気持ちよくなった方が、絶対にいいっ。今のままじゃあたし、死んでも死にきれないもん!」
  いや、お預けを食らって死なずに済むならその方がいいかも知れなかったけど。少なくともこのときのあたしはせっぱ詰まってたから、モノゴトの優先順位がわからなくなっていたのかも。
「りっ、莉子! ……おいっ、待て!」
  あっという間に壁際まで追い詰められた大王。こうなったら、ズボンだって脱がせちゃうからね。ううん、これだけビンビンになってれば、チャックを開けただけで元気に飛び出してくるでしょう? そしたら、自分からいれちゃうから……!
「おいっ―― 」
  いくら払いのけたくたって、力任せに突き飛ばしたりしたらあたしは水の中に落ちちゃうし。だから大王も本当に困った状況だとは思うんだ。でもいいじゃん、だったら理性なんてぶちっと切っちゃおうよ? そうすれば、ふたりとも幸せになれるのに。どうして、我慢できちゃうの? 信じられない。
  ―― かさ。
  そのとき、大王の顔色がすっと変わった。かすかな物音。それが聞こえてきたのは、大王の手の下にあった学ラン、胸のポケット。
  その部分に指が差し込まれ、今ではよく見慣れた「ブツ」が取り出されるまでの一部始終を、あたしはスローモーションの掛かった映像を眺めるみたいに見守っていた。
「たまには、ラッキーな偶然もあるってことか」
  真四角なそれの周囲はギザギザの切り込みで囲われている。その一辺をに歯を当てて食い千切りながら、大王はあたしの腕を素早く捕らえた。
「逃げるんじゃないぞ、こうなったら容赦はしない」
  ひーっ、あっという間に立場逆転ってこと!? 神業のような早さで準備を終えた大王は、膝立ちになってあたしの太股をがっちりと抱え込む。そしてぬかるみに先端を押し当てたかと思うと、一気に一番奥まで突き刺した。
「……んぎゃっ、ぐぎぎっ……!」
  我ながら、なんて情けない声。というか、これって、えっちなシーンで出す喘ぎ声とは違う気がするっ。でもでも、この絶対的な存在感を目の当たりにしたら格好つけてなんていられないんだよ……!
「なんだ、もうイッたのか? これくらいで耐えられなくなるとは、まだまだ訓練が足りないな」
  つい先ほどまでのへっぴり腰はどこへやら、大王は今まで抑え込んでいたものを一気に放出するかのように滅茶苦茶に腰を動かしてくる。
「……そっ、そんなこと言ったってっ! こんな、こんなのっ、ずるい……!」
  やぁん、何でこんなに気持ちいいんだよう。信じられない、もういっぱいいっぱいだと思ってるのに、もっとすごいのが次から次からやって来る。
「やっ、やだぁっ! こんなにしてたら、壊れちゃう……!」
  あたしを何度も絶頂に導きながら、それでも大王のは硬くてげんきがいいまんま。そっちこそ、絶食に近い状態で何日もすごしていたとは思えないほどの体力だよっ。いったいどうなってんの、これ……!
「何を言ってるんだ、いくらやっても足りないと言ったのはお前の方だろう。こうなったら、こっちの気が済むまで付き合ってもらうからな」
  休みなく動き続けていたからだろう、さすがに大王の息も上がってる。あたしの中に突き立てたものはそのままで、一度動きを止める。そしてあたしの背中に腕を回すとそのままそっと抱き起こしてくれた。
「……あっ、ふっ……!」
  角度が変わったことで、また感じやすい部分をさすられてしまう。浅い波がどうやら通り過ぎたところで、あたしはふうっと息を吐き出した。もう気持ちよすぎてどうにかなっちゃいそう。確かに、あたしって気がつけばすごい女になっちゃったような気がする。こんな風にされて、それなのに嬉しくて仕方ないなんて、絶対におかしいよ。
「どうした、もう降参するか?」
  こんな場所で、ほとんど裸の状態で抱き合ってるあたしたちってすごい変態だよね? とりあえず岩に囲まれているとはいえ、ここって思い切り野外だし。こういうプレイには何か名前があった気がする。ええと……何だっけ?
「ううん、……もっとして」
  あたしの首筋に顔を埋めた大王が低く笑う。だけどすぐには行為を再開することなく、そのままぎゅーっと抱きしめていてくれた。つながりあった部分がむずむずして不思議な感触ではあったけど、いつにない特殊な状況がすごく嬉しい。
「大王……今日はすごくやさしいね。いつもと全然違う」
  肩とか背中とか撫で撫でしてくれて、甘いキスが何度も落とされて。あたしの内側が、どんどんとろとろになっていくよ。
「何を言う、俺はいつも通りだ」
  そう言って、また口を塞がれる。お互いの気持ちを探り合うみたいなキス。
「……あたしのこと、高宮葵よりも好き?」
  離れたふたりの唇の間に透明な糸。大王はもう一度吸い付いてきて、それを舌で舐め取る。
「お前を他の誰とも比べることなどできない。……それくらいのことは、とっくにわかっているだろう」
  あたしを強く抱きしめたまま、大王がゆっくりと腰を使い始める。あたしも彼の背中に腕を回して必死にしがみついて、絶え間なく襲ってくる快楽を余すことなくすべて受け止めた。
  そう、それが生きているという意味。世界のすべての人があたしたちの関係を否定しても、絶対に諦められない。心が身体がこんなにもくっついているのに、そんなふたりを引きはがす権利が誰にあるというの?
  あたしはこの繋がりを絶対に手放さない。たとえ、この先に何があっても。 

 

つづく♪ (100906)

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