よみ人しらず
雁なきて寒き朝の露ならし竜田の山をもみだすものは
よみ人しらず
見るごとに秋にもなるかな竜田姫もみぢそむとや山もきるらん
源宗于朝臣
梓弓いるさの山は秋霧のあたるごとにや色まさるらむ
源宗于朝臣
君と我いもせの山も秋くれば色かはりぬる物にぞありける
元方
おそくとく色つく山のもみぢ葉おくれさきたつ露やおくらん
友則
かくばかりもみづる色のこければや錦たつたの山といふらん
よみ人しらず
唐衣たつたの山のもみぢ葉は物思ふ人の袂なりけり
貫之
あしひきの山の山守もる山も紅葉せさする秋はきにけり
忠岑
いく木ともえこそ見わかね秋山の紅葉の錦よそにたてれば
よみ人しらず
秋風のうち吹くからに山も野もなべて錦におりかへすかな
よみ人しらず
などさらに秋かととはむ唐錦たつたの山の紅葉するよを
よみ人しらず
あだなりと我は見なくにもみぢ葉を色のかはれる秋しなければ
貫之
秋霧のたちしかくせばもみぢ葉はおぼつかなくて散りぬべらなり
素性法師
かがみやま山かきくもりしぐるれど紅葉あかくぞ秋は見えける
伊勢
かずしらず君がよはひをのはへつつ名だたるやどの露とならなむ
返し 藤原雅正
露だにも名だたるやどの菊ならば花のあるじやいくよなるらむ
伊勢
菊のうへにおきゐるべくもあらなくに千歳の身をも露になすかな