和歌と俳句

万葉集

巻第一

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   天皇御製歌
三吉野之 耳我嶺尓 時無曽 雪者落家留 間無曽 雨者零計類 其雪乃 時無如  其雨乃 間無如 隈毛不落 念乍叙来 其山道乎

み吉野の 耳我の嶺に 時なくぞ 雪は降りける 間なくぞ 雨は降りける その雪の 時なきがごと  その雨の 間なきがごと 隈もおちず 思ひつつぞこし その山道を

   或本歌
三芳野之 耳我山尓 時自久曽 雪者落等言 無間曽 雨者落等言 其雪 不時如  其雨 無間如 隈毛不堕 思乍叙来 其山道乎

み吉野の 耳我の山に 時じくぞ 雪は降るといふ 間なくぞ 雨は降るといふ その雪の 時じきがごと その雨の 間なきがごと 隈もおちず 思ひつつぞ来し その山道を

   天皇幸于吉野宮時御製歌
淑人乃良跡吉見而好常言師芳野吉見与良人四来三
    紀曰 八年己卯五月庚辰朔甲申幸于吉野宮

淑き人のよしとよく見てよしと言ひし吉野よく見よ良き人よく見