和歌と俳句

万葉集

巻第四

相聞

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     難波天皇妹奉上在山跡皇兄御歌一首
一日社 人母待吉 長氣乎 如此耳待者 有不得勝

     難波天皇の妹 奉上在大和に在す皇兄に奏上る御歌一首
ひとひこそ 人も待ちよき 長きけを かくのみ待たば 有りかつましじ

     崗本天皇の御製一首 并短歌
神代従 生継来者 人多 國尓波満而 味村乃 去来者行跡 吾戀流 君尓之不有者  晝波 日乃久流留麻弖 夜者 夜之明流寸食 念乍 寐宿難尓登 阿可思通良久茂 長此夜乎

     崗本天皇御製一首 并せて短歌
神代より 生れ継ぎ来れば 人さはに 国には満ちて あぢむらの かよひは行けど 吾が恋ふる 君にしあらねば  昼は 日のくるるまで 夜は 世の明くる極み おもひつつ いもねかてにと あかしつらくも 長きこの夜を

     反歌
山羽尓 味村驂 去奈礼騰 吾者左夫思恵 君二四不在者

     反歌
山の端に あぢむら騒ぎ ゆくなれど 吾れはさぶしゑ 君にしあらねば

淡海路乃 鳥篭之山有 不知哉川 氣乃己呂其侶波 戀乍裳将有

あふみぢの とこの山なる いさやがは けのころごろは 恋ひつつもあらむ

      右今案 高市崗本宮後崗本宮二代二帝各有異焉 但?崗本天皇未審其指

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