のこりなく枯れぬる空の色がほに一葉くもらぬ冬の山ざと
後の世の心もしらじあじろもりさえたるそらの月のよなよな
すがはらやふしみの宮の跡ふりていくよの冬の雪つもるらむ
みなといりのあしまの氷けさとぢてさはり障らず舟も通はず
風さやぐいなの篠原雪ふりてみちこそ絶えめおともたえぬる
冬ふかきありあけの空もくもとぢて雪に隈なきをちこちの山
うきねする鴨の上毛にふる雪をかさなるとしの数に見るかな
筒ゐづのゐづつのたるひとけぬまに程なく暮るる冬の影かな
皆人のはるをむかふるこころこそ年のくれぬる気色なりけれ
日も暮れぬ今年はけふを限にてあはれ我が世も知らぬもの故
おほかたにききてややまむ人知れぬ頼む契りのそれもしらねば
ものおもふ袖のよそめはしるくともさぞとは誰か君につたへむ
形見かはただよそながらそれと見て出でこし宿の軒の草葉は
けふはまたありしよりけに音をぞ泣くうきだにそひしよその面影
にほふ夜はさらずものこそ悲しけれ梅さく春と人や頼めし
ことぞともなくて別れし夜半の空月さへあかぬ袖にとまりて
人知れぬ涙の底の水屑より浮きいでてまよふ我がこころかな
わればかりつらき契りは又もあらじ心のあたの報ひ悔ひつつ
久しくも逢はで過ぐべき月日とはかけても知らず知らばいはまし
手に掬ぶほどだにあかぬ山の井のかけはなれ行く袖の白玉