光源法師
いにしへの別れの庭にあへりともけふの涙ぞなみだならまし
前律師慶暹
つねよりもけふの霞ぞあはれなる薪つきにし煙とおもへば
慶範法師
いかなれば今宵の月のさ夜中に照らしもはてで入りしなるらむ
返し 伊勢大輔
世をてらす月かくれにしさ夜中は哀れやみにや皆まどひけむ
よみ人しらず
山のはに入りにし夜半の月なれど名残りはまだにさやけかりけり
伊勢大輔
つもるらむ塵をもいかではらはまし法にあふぎの風のうれしさ
弁乳母
八重菊に蓮の露をおきそへて九しなまでうつろはしつる
康資王母
さきがたき御法の花におく露ややがて衣の玉となるらむ
よみ人しらず
もろともに三つの車にのりしかどわれは一味の雨にぬれにき
僧都覚超
月のわに心をかけしゆふべよりよろづのことを夢とみるかな
前大納言公任
風ふけばまづ破れぬる草の葉によそふるからに袖ぞ露けき
小弁
つねならぬ我が身は水の月なれば世にすみとけむ事もおぼえず
伊勢大輔
ちる花を惜しまばとまれ世の中は心のほかのものとやはきく
赤染衛門
こしらへてかりのやどりにやすめずばまことの道をいかでしらまし
康資王母
道とほみ中空にてやかへらまし思へばかりの宿ぞうれしき
赤染衛門
衣なる玉ともかけてしらざりきゑひさめてこそ嬉しかりけれ
康資王母
鷲の山へだつる雲やふかからむ常にすむなる月を見ぬかな
前大納言公任
世を救ふうちにはたれかいらざらむ普き門は人しささねば
遊女宮木
津の国の難波のことか法ならぬ遊びたはぶれまてとこそきけ