和歌と俳句

後藤夜半

雑色の手をふところに賀茂祭り

風鈴を人が鳴らしてゐたる音

日覆を下ろしとどむる道の上

稚子すでに上りし鉾の日傘

人形に倣ふといへど鉾の稚子

うでぬきの紅濃なりける鉾の稚子

日焼たる須磨浦町のをとめたち

新樹よりこぼるる藤をいぶかしみ

忍冬の花折りもちてほの暗し

浴衣著て女人高野の塔と狎れぬ

七月の菩提樹の実をかく拾ふ

斑猫のけしき変りて蟻を追ふ

斑猫の蟻打てる手の見ゆるなり

てのひらにのせてくださる柏餅

舟先に眞菰へなへな伏し沈む

ハンカチや日の芝に落ちて半ばは木影

木漏れ日のあればとどまる蜥蜴かな

空蝉を子が拾ふ手の女なる

香水やまぬがれがたく老けたまひ

涼しやとおもひ涼しとおもひけり

躓ける格好のまま蝉の殻

風鈴の音には容喙せぬつもり