和歌と俳句

万葉集

巻第一

  明日香川原宮御宇天皇代 天豊財重日足姫天皇
   額田王歌 未詳
金野乃美草刈葺屋杼礼里之兎道乃宮子能借五百磯所念

右検山上憶良大夫類聚歌林曰
一書戊申年幸比良宮大御歌
但紀曰
五年春正月己卯朔辛巳天皇至自紀温泉
三月戊寅朔天皇幸吉野宮而肆宴焉
庚辰日天皇幸近江之平浦

  明日香の川原宮に天の下知らしめす天皇代 天豊財重日足姫天皇
   額田王歌 未詳
秋の野のみ草刈り葺き宿れりし宇治の宮処の仮廬し思ほゆ

右は 山上憶良大夫が類聚歌林に検すに 曰はく
一書には 「戊申の年に比良の宮に幸すときの大御歌」といふ。
ただし 紀には
「五年の春の正月己卯の朔の辛巳に、 天皇紀伊の温湯より至ります三月戊寅の朔に、 天皇吉野の宮に幸して肆宴したまふ庚辰の日に、天皇近江の比良の浦に幸す。」 といふ。

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