和歌と俳句

万葉集

巻第一

<< 戻る | 次へ >>

   額田王 下近江国時作歌 井戸王即和歌
味酒 三輪乃山 青丹吉 奈良能山乃  山際 伊隠万代 道隈 伊積流万代尓  委曲毛 見管行武雄 数々毛 見放武八万雄  情無 雲乃 隠障倍之也

額田王、近江の国に下る時に作る歌、井戸王即ち和ふる歌
味酒 三輪の山 あおによし 奈良の山の 山の際に い隠るまで 道の隈 い積もるまでに つばらにも 見つつ行かむを しばしばも 見放けむ山を 心なく 雲の 隠さふべしや

   反歌
三輪山乎然毛隠賀雲谷裳情有南畝可苦佐布倍思哉

三輪山をしかも隠すか雲だにも心あらなも隠さふべしや

    右二首歌 山上憶良大夫類聚歌林曰 遷都近江国時  御覧三輪山御歌焉 日本書紀曰 六年丙寅春三月辛酉朔己卯 遷都于近江

    右の二首の歌は、山上憶良大夫が類聚歌林には、都を近江国に遷す時に 三輪山を御覧す御歌なり、といふ。日本書紀には、六年丙寅の春三月辛酉の朔の己卯に、 都を近江に遷す、といふ。

綜麻形乃林始乃狭野榛能衣尓著成目尓都久和我勢

綜麻形の林のさきのさ野榛の衣に付くなす目につく我が背