和歌と俳句

万葉集

巻第一

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   天皇遊■蒲生野時額田王作歌
茜草指武良前野逝標野行野守者不見哉君之袖布流

天皇、蒲生野に遊猟したまふ時に、額田王が作る歌
あかねさす紫野行き標野行き 野守は見ずや君が袖振る

 皇太子答御歌 明日香宮御宇天皇謚曰天武天皇
紫草能尓保敝類妹乎尓苦久有者人嬬故尓吾戀目八方

皇太子の答へたまふ御歌
紫草のにほへる妹を憎くあらば人妻故に我れ恋ひめやも

紀曰 天皇七年丁卯夏五月五日縦■於蒲生野 于時大皇弟諸王内大臣及群臣皆悉従焉

紀に曰く、 「(天智)天皇の七年丁卯の五月五日、蒲生野に縦猟す。 時に、大皇弟・諸王・内大臣及び群臣ことごとく従ふ」 といふ。