和歌と俳句

万葉集

巻第一

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   幸于紀伊国時 川島皇子御作歌 或云 山上臣憶良作
白浪乃浜松之枝乃手向草幾代左右二賀年乃経去良武
    日本紀曰 朱鳥四年庚寅秋九月天皇幸紀伊國也

紀伊の国に幸す時に、川島皇子の作らす歌 或は山上憶良作るといふ
白波の浜松が枝の手向けくさ幾代までにか年の経ぬらむ
日本紀に曰く 朱鳥の四年庚寅の秋九月に、天皇紀伊の国に幸す。

   越勢能山時 阿閉皇女御作歌
此也是能倭尓四手者我恋流木路尓有云名二負勢能山

背の山を越ゆる時に、阿閑皇女の作らす歌
これやこの大和にしては我が恋ふる紀伊道にありといふ名に負ふ背の山