和歌と俳句

万葉集

巻第四

相聞

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     大納言兼大将軍大伴卿歌一首
神樹尓毛 手者觸云乎 打細丹 人妻跡云者 不觸物可聞

神樹にも 手は触るといふを うつたへに 人妻といへば 触れぬものかも

     石川郎女歌一首 即佐保大伴大家也
春日野之 山邊道乎 与曽理無 通之君我 不所見許呂香裳

春日野の 山辺の道を よそりなく 通ひし君が みえぬころかも

     大伴女郎歌一首 今城王之母也今城王後賜大原真人氏也
雨障 常為公者 久堅乃 昨夜雨尓 将懲鴨

雨つつみ 常するきみは ひさかたの きぞの夜の雨に 懲りにけむかも

     後人追同歌一首
久堅乃 雨毛落粳 雨乍見 於君副而 此日令晩

ひさかたの 雨もふらぬか 雨つつみ 君にたぐひて この日くらさむ

     藤原宇合大夫遷任上京時常陸娘子贈歌一首
庭立 麻手苅干 布暴 東女乎 忘賜名

     藤原宇合大夫 遷任して京に上る時 常陸娘子が贈る歌一首
庭に立つ 麻手刈り干し 布さらす あづまをみなを 忘れたまふな

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