坂上望城
ほのかにぞ鳴き渡るなる郭公み山をいづる今朝のはつ声
右大将道綱母
宮こ人ねてまつらめや郭公今ぞ山べをなきていづなる
壬生忠見
さ夜ふけてねさめざりせば郭公人づてにこそきくべかりけれ
源公忠朝臣
行きやらで山路くらしつほととぎす今ひとこゑのきかまほしさに
よみ人しらず
さみたれはちかくなるらしよど河のあやめの草もみくさおひにけり
能宣
昨日まてよそに思ひしあやめ草けふわがやどのつまと見るかな
よみ人しらず
けふ見れば玉のうてなもなかりけりあやめの草のいほりのみして
延喜御製
あしびきの山郭公けふとてやあやめの草のねにたててなく
よみ人しらず
たがそでに思ひよそへて郭公花橘のえだになくらん
壬生忠見
いづ方になきてゆくらむ郭公よどのわたりのまだ夜深きに
壬生忠見
しげるごと真菰の生ふるよどのには露のやどりを人ぞかりける
貫之
かの方にはやこきよせよ郭公道になきつと人にかたらん
躬恒
郭公をちかへりなけうなゐ児がうちたれがみの五月雨の空
よみ人しらず
なけやなけ誰が田の山の郭公この五月雨にこゑな惜しみそ
よみ人しらず
五月雨はいこそねられね郭公夜ふかくなかむこゑをまつとて
よみ人しらず
うたて人おもはむものをほととぎす夜しもなどかわがやどになく