和歌と俳句

前斎宮河内

うすき名の たちそめてけり 夏衣 きるよりひとや こころおくらむ

卯の花の 垣根は雪の ここちして ふゆのけしきに 見ゆる山里

あふひ草 祈りかけてし 言の葉を あだのかざしと おもはざらなむ

よをかさね 待つをば知らで ほととぎす いかなる里に なきふるすらむ

あふことの ひさしにふける あやめ草 ただかりそめの つまとこそみれ

早苗とる 田子のもすそに あらなくに ぬれぎぬをのみ などか着ぬらむ

よをかさね 木のした露に 濡るるかな ともしの鹿の めをもあはせで

さみだれの ひまなきころは 水まさり 安積の沼の 名にやたがはむ

なつかしき 花たちばなの にほひかな おもひよそふる 袖しなけれど

さわみづに いれどもきえぬ 蛍かな いかばかりなる おもひなるらむ

やまかつの そともにたてる 蚊遣火の 下に焦がれて やみぬべきかな

もろ人を 救ふてふなる はちす葉の おもひしれとや うきしづむらむ

とけねども うはなたらなる 人かとよ 名は氷室て したはこほれる

ひともみぬ たかねにいづる 泉をば たれかなつとは いひながしけむ

かはみづに うきことのはは みなづきの 禊の瀬々に 流すけふかな