和歌と俳句

藤原清輔

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鐘のおとに そそや明けぬと おどろけば ただひとり寝の 枕なりけり

わが恋を なかなかひとは しのびけり なさけは人の ものにぞありける

千載集・恋
しばしこそ 濡るるたもとも しぼりしか 涙にいまは まかせてぞ見る

かは千鳥 なくや沢辺の おほゐ草 裾うちおほひ ひとよ寝にけり

逢ふことの とをちの里は 大和川 思はぬなかに ありとこそきけ

そなたより 吹き来る風ぞ なつかしき 妹が袂に 触れやしつらむ

秋の色や 思ひの色の はひならむ 今ひとしほぞ しむここちする

いはねふみ 重なる山を 行くよりも 苦しきものは 恋路なりけり

千載集・恋
涙川 うき寝の鳥と なりぬれど 人にはえこそ みなれざりけれ

新古今集・恋
人知れず 苦しきものは しのぶ山 下はふ葛の うらみなりけり

秋風に うへのの薄 うちなびき ほのめかしつる かひもあらなむ

くれなゐの 裾ひくほどの やどなれで 色に出でねば 人に知られじ

よそながら ほのめかしつる 訪ふ日さへ などかきけちて 見えぬなるらむ

契おきし しちのはしかき 見えねども みとのまくはひ 月日へにけり

とりのこを ためしにいひし 程よりも 君が辛さは かさなりにけり

はしたかの しらふになりて 恋すれば 野守の鏡 影もはづかし

ひとり寝て 床のうらわに 夜もすがら むせぶけぶりは あまの焚く火か

よとともに かへして着つる から衣 いくよといふに しるし見つらむ

ふるさとを しのう寝覚めの 草枕 露に露そふ ここちこそすれ

妹をおきて みやこへしまの 舟出には うちとまりこそ 波はかけけれ