おのづから いへづとにこそ なりにけり 道のたよりに 折れる早蕨
苗代の 水をひきひき あらそひて 心にえこそ まかせざりけれ
狩人の 朝ふむ小野の 草若み かくろひかねて きぎす鳴くなり
もろこゑに うきぬの池に なくかはづ おなじ心に 何おもふらむ
猿沢の 池の玉藻に なくかはづ むかしをしのぶ こゑにやあるらむ
花もはや 根にかへりぬる 山里に 遅れて春の いづち行くらむ
ともにこそ 舟出はしつれ 暮るる春 などやとまりを よそに過ぎぬる
咲きたてて 惜しみし花を やりしより かへらむものと 春は知りにき
誰がために かたみに明日を とどめおきて 今宵は春の たちかへるらむ
いかにして 散りにし花に 告げやらむ なにゆゑけふも 惜しき春ぞも