炭と梅馬とみ寺の駅ざかひ
冬萌えのおちばすきまに冴ゆるかな
冬萌えや茶の実をひろふ椀のかご
冬ざるる豆柿のあまさとほりけり
冬ざれや日あし沁み入る水の垢
干鰯たやさぬ冬の深まりて
障子には毛布つるしぬ冬ごもり
烏瓜冬ごもる屋根に残りけり
わが家には菊まだのこるしぐれかな
消炭のつやをふくめる時雨かな
しぐるるや煤によごれし竹の幹
山あひに日のあたりゐるしぐれかな
金沢のしぐれをおもふ火桶かな
菊焚いて鵞鳥おどろく時雨かな
入洛や地図をひろげる初時雨
波こほる隅田を見しよ町のあひ
寒の水寒餅ひたしたくはへぬ
しんとする芝居さい中あられかな
水仙の芽の二三寸あられかな
しめなはの北なびきするみぞれかな
まんまるくなりたるままの氷なり
潦にごれるままに氷りけり
ふるさとに身もと洗はる寒さかな
松風の奥に寺ある寒さかな
しんとして音なく更ける寒さかな