和歌と俳句

長谷川素逝

1 2 3 4 5

対陣の雪が野に降る壕に降る

つちふるや一天くらく林鳴り

つちふるや日輪たかく黄に変じ

雪に伏し掌あはすかたきににくしと見る

雪の上にけもののごとく屠りたり

水得んと涸れたる沼の底を掘る

酷寒とうゑとのかたきあはれまず

土色の冬ひしひしと野にきびし

みいくさは酷寒の野をおほひ征く

凍る野に部落は土壁めぐらせる

酷寒が戦禍のすぎし焼けあとに

酷寒のたうべる草もなき土民

いくさゆゑうゑたるものら枯野ゆく

村を捨てこの酷寒をどこへゆきし

酷寒は家なきものらにも来たる

おづおづと氷雨にぬれてかたまれる

あはれ民凍てしいひさへ掌に受くる

民うゑぬ酷寒は野をおほひけり

酷寒はかたきを土匪となし果てぬ

宣撫班酷寒の野をとらつく駆り

北風がときに宣撫の声をさらふ

酷寒とうゑとの貌があつまり聞く

食を乞ふかじかめる掌の指ひらき

食を乞ふ少年あばら骨さむく

宣撫ぽすたあに冬あたたかき顔をよせ

凍る野に城門をあけ民ら迎ふ

雪に立ち治安維持会員と写真撮る

山ねむるかたきこもると指すは遠く

ねむりたる谷にかたきは匪とこもる

地凍る漢民族の大き国土

赭土の断崖のもと凍る黄河

凍る断崖黄河文明起りし地

進軍はつらなる嶺々の雪を越え

馬ゆかず雪はおもてをたたくなり

雪の上に焚くべきものもなく暮れぬ

足ふみをして暖をとるばかりなり

雪の上にうつぶす敵屍銅貨散り