和歌と俳句

万葉集

巻第三

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   長皇子遊■路池之時 柿本朝臣人麻呂作歌一首并短歌

  長皇子、猟路の池に遊す時に、柿本朝臣人麻呂が作る歌一首 并せて短歌

八隅知之 吾大王 高光 吾日乃皇子乃  馬並而 三■立流 弱薦乎 ■路乃小野尓 十六社者 伊波比拜目 鶉己曽 伊波比廻礼 四時自物 伊波比拜 鶉成 伊波比毛等保理 恐等 仕奉而 久堅乃 天見如久 真十鏡 仰而雖見 春草之 益目頬四寸 吾於富吉美可聞

やすみしし 我が大君 高光る 我が日の皇子の  馬並めて 御狩立たせる 若薦を 猟路の小野に 鹿こそば い匐ひ拝め 鶉こそ い匐ひ廻れ  鹿じもの い匐ひ拝み 鶉なす い匐ひ廻り 恐みと 仕へまつりて ひさかたの 天見るごとく  まそ鏡 仰ぎて見れど 春草の いやめづらしき 我が大君かも

   反歌一首 
久堅乃天帰月乎網尓刺我大王者盖尓為有

ひさかたの天行く月を網に刺し我が大君は蓋にせり

   或本反歌一首 
皇者神尓之坐者真木乃立荒山中尓海成可聞

大君は神にしませば真木の立つ荒中山に海を成すかも