和歌と俳句

万葉集

巻第三

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   笠朝臣金村塩津山作歌二首

大夫之弓上振起射都流矢乎後将見人者語継金

ますらをのゆずゑふりおこせ射つる矢をのち見む人もかたりつぐがね

塩津山打越去者我乗有馬曽爪突家戀良霜

塩津山うちこえゆけばあがのれる馬ぞつまづくいへこふらしも

   角鹿津乗船時笠朝臣金村作歌一首并短歌

越海之 角鹿乃濱従 大舟尓 真梶貫下 勇魚取  海路尓出而 阿倍寸管 我榜行者 大夫之 手結我浦尓  海未通女 塩焼炎 草枕 客之有者 獨為而  見知師無美 綿津海乃 手二巻四而有 珠手次  懸而之努櫃 日本嶋根乎

越の海の 角鹿の濱ゆ 大舟に 真梶ぬきおろし 勇魚とり  海路にいでて あへぎつつ わがこぎゆけば ますらをの たゆひが浦に  あまをとめ 塩焼くけぶり 草枕 たびにしあれば ひとりして  みるしるしなみ わたつみの てにまかしたる たまだすき  かけてしのひつ やまとしまねを

反歌
越海乃 手結之浦矣 客為而 見者乏見 日本思櫃

越の海 たゆひが浦を たびにして 見ればともしみ やまとしのひつ

   石上大夫歌一首
大船二真梶繁貫大王之御命恐磯廻為鴨
    右今案 石上朝臣乙麻呂任越前國守盖此大夫歟

大船に 真梶しじぬき おほきみの みことかしこみ 磯廻するかも

   和歌一首
物部乃臣之壮士者大王任乃随意聞跡云物曽
    右作者未審 但笠朝臣金村之歌中出也

物部の臣の壮士は大王の任のまにまに聞といふものぞ