和歌と俳句

拾遺和歌集

雑恋

人麿
をとめごが袖ふる山のみづがきのひさしきよより思ひそめてき

平定文
いなり山社の數を人とはばつれなき人をみつとこたへむ

人麿
みしま江の玉江のあしをしめしよりおのかとぞ思ふいまだからねど

能宣
あだなりとあだにはいかがさだむらん人の心を人はしるやは

よみ人しらす
すくろくのいちはにたてるひとつまのあはでやみなん物にやはあらぬ

よみ人しらす
濡れ衣をいかが着ざらん世の人はあめのしたにしすまんかぎりは

贈太政大臣道真
あめのしたのがるる人のなければや着てし濡れ衣ひるよしもなき

よみ人しらす
いづくとも所定めぬ白雲のかからぬ山はあらしとぞ思ふ

よみ人しらす
白雲のかかるそら事する人を山のふもとによせてけるかな

よみ人しらす
いつしかもつくまのまつりはやせなんつれなき人のなへのかす見む

小野宮太政大臣実頼
人しれぬ人まちかほに見ゆめるはたがたのめたるこよひなるらん

返し 明日香采女
池水のそこにあらではねぬなはのくる人もなしまつ人もなし

右近
人しれずたのめし事は柏木のもりやしにけむ世にふりにけり

よみ人しらす
秋萩の花もうゑおかぬ宿なれば鹿たちよらむ所だになし

よみ人しらす
こゆるぎのいそぎてきつるかひもなくまたこそたてれ沖つ白波

よみ人しらす
しのびつつよるこそきしか唐衣ひとや見むとはおもはざりしを

くにもち
宮つくる飛騨の匠の手斧おとほとほとしかるめをも見しかな

よみ人しらす
有りとてもいく世かはふるからくにの虎ふす野辺に身をもなげてん

貫之
むすぶ手のしづくににごる山の井のあかでも人に別れぬるかな

貫之
家ながらわかるる時は山の井のにごりしよりもわびしかりけり