よみ人しらず
はしたかの とかへる山の しひしばの はかへはすとも きみはかへせじ
よみ人しらず
あやまちの あるかなきかを しらぬ身は いとふににたる ここちこそすれ
よみ人しらず
ゆく水の あわならばこそ きえかへり 人のふちせを 流れても見め
よみ人しらず
ともかくも いひはなたれよ 池水の ふかさあささを たれかしるべき
在原業平朝臣
そめ河を わたらん人の いかでかは 色になるてふ 事のなからん
兵衛
ちはやふる かもの河辺の 藤なみは かけてわするる 時のなきかな
よみ人しらず
世の中は いかがはせまし しげ山の 青葉の杉の しるしだになし
よみ人しらず
むもれ木は 中むしはむと いふめれば 久米路のはしは 心してゆけ
よみ人しらす
世の中は いさともいさや 風のおとは 秋に秋そふ 心地こそすれ
人麿
いはみなる たかまの山の このまより わがふる袖を 妹見けんかも
貫之
おきつ浪 たかしのはまの はま松の 名にこそきみを まちわたりつれ
天暦御製
君をのみ 思ひやりつつ 神よりも 心のそらに なりしよひかな
貫之
思ひやる 越の白山 しらねども ひと夜も夢に こえぬ日ぞなき
人麿
山しなの こはたの里に 馬はあれと かちよりぞくる 君を思へば
人麿
春日山 雲井かくれて とほけれど 家はおもはず 君をこそおもへ
坂上郎女
わがせこを こふるもくるし いとまあらば ひろひてゆかむ 恋忘かひ
恵慶法師
旧里を こふるたもとも かわかぬに 又しほたるる あまも有りけり
大中臣頼基
しほたるる 身は我とのみ 思へども よそなる鶴も ねをぞなくなる
よみ人しらず
つれづれと 思へばうきに おふるあしの はかなき世をば いかがたのまむ
順
さだめなき 人の心に くらぶれば ただうきしまは 名のみなりけり